▽ 6-3
side R
なまえとすれ違いの日々が続いていた。
俺自身も仕事が忙しくて、帰れない日々が続いたり合間を見て家に帰ってもなまえがまだ残業をしていたりでもう四日連続で顔を見ていない。
今日も泊まりで仕事かな・・・と考えていたが、少しでも家に帰ってあいつと話がしたいと思い必死に仕事を片付けたのが数時間前。
ようやく家に着いたときにはもう十一時前だった。
駐車場に車を停めて降りる。
さすがにこの時間ならもうなまえも帰っているだろうか。
毎日仕事であいつも疲れているだろう。
そんな思いから、なにか甘いものでも買って帰ってやろうと思い家に向かっていた足を近所のコンビニへと向けた。
わざわざ車に乗るほどの距離でもないので、月明かりに照らされた道を一人で歩く。
コンビニの灯りが見えてくると同時に、駐車場に並ぶ二つの影に気づく。
「━━━━・・・でね、・・・ははっ!━━━━・・・ちゃん・・・」
「ははっ!━━━・・・しぶりに・・・たよ!」
男女の話し声。そして笑い声。
途切れ途切れに聞こえてくる言葉ははっきりとは聞き取れないが、楽しげな笑い声だけははっきりと聞き取ることが出来た。
「・・・・・・・・・なまえ?」
聞き間違うはずのない彼女の声。
隣にいる男に視線を向けたその瞬間、思わず息を飲んだ。
「・・・・・・景・・・・・・」
そういえばよく似た男に会ったといつかの彼女が言っていたっけ。
たしかに彼は景によく似ていた。
けれどよく見れば別人なのだ。
それでも景によく似た男の隣で楽しげに笑うなまえの姿は、容赦なく俺の心を抉った。
その場に立っているのが辛くて、小走りで車まで戻ってきた俺は思わずその場に座り込んだ。
あれはきっともしもの未来。
景がいればなまえは今でもああやってあいつの隣で笑っていたのだ。
「・・・・・・っ・・・くそ・・・っ!」
どんっと車を叩く。ひりひりと痛む拳。けれどそれよりも心が痛かった。
俺がなまえからあの未来を奪ったんだ。
なのに今になって彼女に気持ちを伝えてどうなるというのだ。
所詮それは俺の自己満足でしかない。
その現実が容赦なく俺の両肩へと伸し掛る。
「・・・・・・景、ごめんな・・・」
亡き親友への謝罪の言葉が、静かな夜の闇に溶けて消えていった。
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