カミサマ、この恋を | ナノ
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▽ 2-1



中学に上がっても私とヒロくん、そして零との関係は変わらなかった。



「こんなのも分かんないのか?ちゃんと授業聞いてたら分かるだろ?」
「・・・・・・だーかーらー!!私は別に零に勉強教えて欲しいって言ってないもん!」


放課後、ヒロくんに勉強を教えてもらっていたら当たり前のようにセットでついてくるこの男は、私に憎まれ口しか叩けないのだろうか。


肘をついて私の教科書を覗き込みながら、ふっと笑う零。これでこの男が勉強苦手ならからかうこともできるのに、ヒロくんより賢いとくるから言い返すこともできない。



「なまえは数学苦手だもんな、ゆっくりやれば分かるよ」
「景は甘やかしすぎだろ」
「零と違ってヒロくんは優しいのー!」


零に向かってべーっと舌を出せば、ぱしんと教科書で頭を叩かれる。


東京に引っ越してきてから、この三人で過ごすことが多かった。


零は何かと私に突っかかってくるし、私は私でヒロくんを取られた気がして零には素直になれない。そんな私達を見て、ヒロくんはいつも笑ってた。


それでも三人で過ごす時間は、嫌いじゃなかった。零のことも、なんだかんだで優しく不器用な人なことは理解していてた。


くだらない事で笑っていられるこの時間がとても大切だった。



*



「なまえちゃんって降谷先輩か諸伏先輩と付き合ってるの?」
「・・・・・・はい?」


中学生ともなれば、女の子の興味は恋愛へと傾く。


そして何故かあの二人はモテる。ヒロくんは誰にでも優しいし、顔もかっこいいから分かる。でもあのツンツン男の零もモテるのだから、やはり顔が整ってるというのは正義らしい。


「付き合ってないよ。二人とも友達」


否定すると、どちらがかっこいいかで盛り上がるクラスメイト達。


「でもやっぱり降谷先輩だよ!めちゃくちゃかっこいいもん!」

きゃーと盛り上がる彼女達に冷ややかな声が飛んでくる。


「三年だからってカッコつけて髪の毛染めたり、チャラチャラしてるだけじゃねーか」
「どうせ彼女とっかえひっかえして遊んでるよ」


ケラケラと下品に笑う男子生徒。髪の毛を染めたり・・・の一言から、ヒロくんを馬鹿にされたわけじゃないことは分かる。彼らの対象は零だ。


別に零の事が好きなわけじゃない。これがヒロくんを馬鹿にされたのなら、一発殴ってやろうかとも思うが・・・。


「あのさ、零のあれは地毛だから。それにチャラチャラもしてない。なにも知らないくせにそうやって言うのかっこ悪い」


気が付けば、私の口から零れたのは怒りを伴った言葉だった。



零が自分の見た目に対して、コンプレックスを感じていたことを知っていた。その見た目から虐められたり、からかわれたりする事は前からあった。


ヒロくん曰く、前よりはマシになったし本人も昔ほど気にしてないから大丈夫らしいけれど、やはり何も知らない人間に馬鹿にされるのは納得できない。


「・・・なっ、結局お前も顔がいいからあいつらとつるんでるんだろ」

そう吐き捨てた男子に、食って掛かろうとしたところで女子達がざわざわとし始めたことに気付く。



彼女達の視線は教室のドアに向けられていて、そこに立っていたのは噂の源の金髪の彼だった。



「・・・・・・げ」
「何が、げ、だよ。あんまり揉め事起こすと景が心配するぞ」

穏やかとはいえない様子の、私と男子生徒をちらりと見て、零が笑った。


頬を赤らめながらひそひそと話す女子達に目もくれず私の元へとやって来た彼。


「これ。昨日勉強してた時に俺の鞄に混ざってた。なまえのノートだろ」
「・・・・・・あ、本当だ。ありがと」
「おう」


みょうじ なまえと書かれたノートを私に渡すと、ひらひらと手を振りながら教室を出ていく彼の後ろ姿を見送る。


なんだか小っ恥ずかしい。普段憎まれ口を叩いてるのに、こうやって彼のことでムキになっている自分を当の本人に見られたことに少し気恥しい気がしてしまったのだった。

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