続・もし出会わなければ | ナノ
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▽ 6-6



Another side(1/2)

ようやく仕事が終わり、警察庁を出ようとしたところで風見に声をかけられる。


「降谷さん、お疲れ様です」
「あぁ、お疲れ。色々と急がせて悪かったな」
「いや、そんな・・・。それよりまた警察官が撃たれたようです」
「なに?」


風見の言葉に嫌な汗が背中を伝う。


「米花サンプラザホテルで、警視庁捜査一課の佐藤美和子警部補が撃たれ重症のようです」


米花サンプラザホテル。


まさか・・・・・・。


そのとき、ポケットに入れていた携帯が着信を知らせた。


「・・・お呼び止めしてすいませんでした。お疲れ様です」

それに気付いた風見が頭を下げ、去っていく。


着信の相手は、毛利さんだった。


「はい、安室です」
『あっ、もしもし。蘭です、父の携帯からすいません』


電話の相手は毛利さんではなく蘭さんだった。


いつもより早口で落ち着きのない彼女の声が不安を煽る。


「大丈夫ですよ。どうかされましたか?」
『・・・・・・なまえさんが・・・っ、』




予感が確信へと変わる。


蘭さんとの電話を終えた俺は、急いで愛車に乗り込み乱暴にキーを回した。





米花薬師野病院。


駐車場へ車を停めると、急いで言われた病室へと向かう。


「・・・っ、なまえ?!」

そこには色のない表情でベッドに横たわるなまえがいた。


ベッドの脇には蘭さん、園子さんの姿があった。


「安室さん・・・。なまえさん、腕を少し銃弾が掠めただけで命に別状はないそうです。意識ももう少ししたら戻るだろうってお医者さんが言ってました」


蘭さんのその言葉に、安堵の息が零れた。


「・・・・・・っ、よかった・・・」

閉じたままの瞼。いつもより少し温度の低い彼女の首筋に手を当てる。


そこにはたしかにどくんっと脈打つ拍動がある。


彼女が生きている証だ。


「・・・・・・毛利先生達はどちらですか?僕も事件の話をききたいんですが」
「佐藤刑事の手術がもう少しで終わるみたいで、みんな手術室の前にいると思います」
「ありがとうございます。このまま少しなまえのことをお願いしてもいいですか?」
「えぇ、もちろんです。また意識が戻ったら声かけますね」


一応なまえの無事はわかったが、あの様子だと佐藤刑事の方はかなり深刻なんだろう。


手術室の前に行くと、目暮警部を始めみんなが揃っていた。


「おお、お前も来たのか。なまえさんは大丈夫そうか?」

俺に気付いた毛利さんがこちらにやって来る。


「蘭さん達が今は付いていてくれているので大丈夫そうです。ご連絡ありがとうございました・・・」
「気にするな、連絡したのは蘭だし俺は何もしてねーよ」


毛利さんはぽんっと俺の肩に手を置き、目暮警部の隣に座った。


「捜査の方はどうなったの?」

コナン君が目暮警部に問いかける。

事件の大体の流れは、蘭さんから電話で聞いたが詳細は俺も気になっていた。


「全員の硝煙反応を調べましたが、でませんでした」

目暮警部の代わりに白鳥警部が答えた。


「出ない?!」
「犯人は出入口を封鎖する前に、逃走したものと思われます」
「拳銃から指紋は?」
「・・・それもでませんでした」


高木刑事が残念そうに肩を竦めた。


そこに千葉刑事がやって来た。


「千葉君、配電盤の仕掛けは特定出来たかね?」
「はい、どうやら携帯電話の呼出で爆発する仕掛けになっていたようです」


目暮警部がうむ・・・と考え込んでいると、高木刑事が「一つ気になることがあるんですが」と口を開いた。


「トイレに落ちていた懐中電灯は、最初から佐藤さんが持っていたんでしょうか?」
「違うと思うよ」

コナン君が答えた。


「化粧台の下の物入れが開いていたでしょ?たぶんそこに置いてあったんだよ。つけっぱなしで」


なるほど、そういうことか。


犯行の状況が少しずつ見えてくる。


「じゃあ犯人が・・・!」
「なるほど、電気が着いているときには誰も気づかない」

白鳥警部はそう言うと、目暮警部に顔を近づけてささやいた。


「これであの事件に関係していることはほぼ間違いないですね・・・」
「あの事件って?」

その小さな声を聞き逃さなかった毛利さんが、目暮警部に尋ねるも「い、いやぁ」と言葉を濁されてしまう。



「どうして話してくれないんですか!警部殿!」

毛利さんが目暮警部に詰め寄ったその時、蘭さんが病棟に続く扉から出てきた。



「大変です!なまえさんが・・・!」

焦りを帯びたその声が不安を煽る。


「なまえがどうしたんですか?」
「意識は戻ったんですけど、様子がおかしくて・・・」
「・・・っ!!」


急いで毛利さんらと共に病室へと向かう。



「なまえ!」


病室に駆け込むと、先程とは違いなまえはベッドの上で上半身を起こしていた。


俺達に気づいて扉の方を見るが、その瞳はどこか虚ろでぼんやりとしている。


「・・・・・・なまえ?」

ベッドの傍に近づき、彼女に声をかける。














「・・・・・・貴方は誰?」





まるでなにかで殴られたかのような衝撃だった。


真っ直ぐに俺の顔を見て、そう言ったなまえの姿に背後でコナン君や毛利さんは息を飲んだ。



「なまえさん、皆のこと思い出せないみたいなんです・・・・・・。それに自分の名前もわからないって・・・っ」


園子さんが言葉をつまらせながら言う。



嘘だ。


なまえが俺を忘れるはずがない。


「・・・・・・俺の事も覚えてないのか?なまえ!嘘だよな・・・?」

思わずなまえの腕を掴む。


「っ、おい!安室、やめろ!今そう言っても怖がらせるだけだ!」
「・・・っ!」


毛利さんに腕を引かれた俺は、なまえの傍から一歩下がる。


俺見る彼女の瞳はいつもの柔らかく優しいものではなかった。そこにあったのは、戸惑いだけだった。

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