続・もし出会わなければ | ナノ
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▽ 6-4



吹き抜けの豪華なシャンデリアが輝くメインロビーを抜けて、加藤さんのお店がオープンするという三十階へと向かう。


オープニングイベントは予定通り進み、店長に代わりお祝いの言葉を彼に伝えることも出来た。


イベントもお開きになり、パラパラと帰路に着く人々。


帰る前に化粧室に寄ってから帰ろう。


そう思った私は、クロークに預けていた鞄を受け取り化粧室に向かった。


「あれ?なまえさん?!」


パウダールームで化粧を直していると、聞き覚えのある声に名前を呼ばれる。


振り返るとそこにいたのは、蘭ちゃんだった。


「蘭ちゃん?どうしてここに?」
「お父さんの付き添いで知り合いの結婚パーティーに来たんです。なまえさんは?」
「私はお店の常連さんがここの上に自分のお店を出すことになって、そのオープニングイベントに来てたの。こんなところで会うなんてびっくりしたね」


まさかの遭遇に二人でそんな話をしていると、エメラルドグリーンのワンピースに身を包んだショートカットの女性が化粧室にやって来た。


この人は・・・。


「あら?蘭ちゃん。それと・・・・・・お友達?」


人あたりのいい笑顔を浮かべながら、話しかけてきたのは佐藤刑事だ。


初めて会ったけど顔小さいなぁ・・・、なんてことを考えていると蘭ちゃんが私のことを紹介してくれる。


「あ!こちらみょうじ なまえさんです。安室さんの恋人で・・・」
「え!そうなの?!彼、恋人がいたのね!」


悪戯な笑顔を浮かべながら、詳しく聞かせてよとからかわれる私。


「私は佐藤 美和子。これでも現役バリバリの警察官です」

良かったら仲良くしてね、と笑う彼女はとても綺麗だ。


「でも佐藤刑事も気をつけてくださいね」

蘭ちゃんが心配そうに彼女を見る。


「だって、刑事さんが次々と撃たれてるから・・・」

心配する蘭ちゃんに、佐藤刑事は親指を立ててウインクをする。


「大丈夫よ!私タフだから!」
「もう、心配してるんですよ。あ!ちょっと電話掛かってきたんで先に戻りますね」


携帯を見た蘭ちゃんが、私達に軽く頭を下げながら化粧室を出ていく。


残された化粧室で、私と佐藤刑事は化粧を直しながら他愛もない話をしていた。


「にしてもあの安室さんにこんな可愛い恋人がいたなんてね」
「そんな・・・っ、佐藤刑事の方がお綺麗ですよ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね!」


口紅を塗り直した彼女がこちらを見てにっこりと笑う。


その瞬間、突然化粧室の照明が落ちた。辺りは暗闇に包まれる。


「どうしたのかな・・・」
「なまえさん。危ないから動かないで。様子を見てくるから」


佐藤刑事がぽんと肩に手を置き声をかけてくれる。


暗闇に包まれた化粧室の中を手探りで進む佐藤刑事。


ふと洗面台の下からかすかに漏れる光に気付く。


あれは・・・。


僅かに漏れる光に手を伸ばし、扉を開けるとそこには懐中電灯が置かれていた。


「佐藤刑事!懐中電灯があるみたいなので、よかったらこれ・・・!」


私はその懐中電灯を掴み、彼女の方へと向けた。


そのとき、出口の方からカチリと音がした。その音に気がついた佐藤刑事が振り返る。


そこには懐中電灯に照らされて、サイレンサー付きの拳銃を持った手が浮かび上がった。


「ダメ!なまえさん!」

佐藤刑事がこちらに手を伸ばすと同時に、パシュ!っという音が耳を掠めた。


放たれた銃弾が洗面台の蛇口に直撃して、吹き出した水が辺りに撒き散らされる。


持っていた懐中電灯がくるくると回転しながら落下し、その光に照らされて黒い人物の顔が一瞬浮かび上がる。


光に照らされた瞬間、その人物は拳銃をこちらに向けて撃ったが弾は壁へと当たり、倒れてきた佐藤刑事と共に私は床へと倒れ込んだ。


すぐに非常用照明が点灯して、化粧室も薄暗い灯りに照らされる。



「・・・・・・佐藤・・・刑事・・・?」


目の前に広がるのは真っ赤な血と、ぴくりとも動かない佐藤刑事。


水浸しになった床に、彼女の血がどんどんと広がる。


指先の温度がどんどんと失われていく。


私が・・・・・・懐中電灯・・・・・・。


まただ・・・・・・。


私が余計なことをしたせいで・・・・・・。



「いやあぁぁぁぁぁぁ!!!!」



私の意識は、ぷつりとそこで途絶えた。

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