たんぺん | ナノ
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▽ 1-4



「もしかして安室さんに似てる知り合いって彼氏とかですか?」

安室さんが仕事に戻り、私達の席から離れると園子ちゃんが楽しそうに口を開く。


「ちょっと、園子・・・」
「大丈夫だよ。うん、まぁ彼氏かな」

止めに入ろうとした蘭ちゃんに笑顔を向けて質問を肯定すると詳しく聞きたい!と身を乗り出す園子ちゃん。


やっぱり高校生とかって恋愛話好きだよね。

微笑ましい気持ちになりながら話を続ける。


「その彼氏さんも安室さんみたいに優しい人なんですか?」
「いや、あんなニコニコ優しい雰囲気の人じゃないよ」


出かける前の一件を思い出し思わず眉間に皺が寄る。


「やっぱり見た目が似てても、中身は違いますよね」
「確かに・・・、なんか安室さんだったら歯の浮くような台詞言っても様になる感じよね」
「あはは、私の彼氏は甘い言葉なんて絶対言わないよ」


やはり世代が違ってもガールズトークは盛り上がるものらしい。


「よかったらどうぞ。僕からサービスです」
「わぁ、ありがとうございます!」

三人分のケーキセットを持った安室さんが私達の席へとやってくる。


「随分盛り上がってますね」
「なまえさんの彼氏さんの話でね!安室さんに似てるみたいだけど、中身は真逆なんだって」
「ほぉー、それはおもしろいですね」


あ、まずい。
そう思ったときにはすでに遅い。


にっこりと笑った彼が僕にも聞かせてくださいと話に加わる。

いやいや、仕事中でしょ・・・。なんてそんなこと言えるわけもなく、顔が引き攣りそうになるのを堪えて笑顔を作る。




「なるほど、やっぱり女心は難しいですね」
「とか言いつつ安室さんはモテモテじゃないですか!」

あははっと笑い合う園子ちゃんと安室さんに、私の心はどきどきと変な鼓動が止まらない。


うまく誤魔化そうとしたけれど、園子ちゃん達に話した零への愚痴は安室さんに筒抜けだった。


家に帰るのが怖い・・・・・・。


今はニコニコとしてる安室さんが降谷零に戻る瞬間が恐怖でしかない・・・。


「やっぱりなまえさんも彼氏さんには、ちゃんと不満は伝えるべきですよ」
「あははー、別に不満ってほどでも・・・」

安室さんの方を見ることが出来ず、少しずつ蘭ちゃんの後ろに隠れようとするも園子ちゃんにびしっとそう言われてしまうともう笑って誤魔化すしかない。


「僕もそう思いますよ。なまえさんは素敵な女性だと思いますし、きっと彼も分かってくれます」


素敵な女性・・・、零は口が裂けても笑顔でそんな台詞を言うことはないだろう。

なのになんでこんなにモヤモヤするんだろ・・・。


「いい子で待ってろよ」


ふと朝の零とのやりとりを思い出す。
あっちの方が素直に喜べたかも・・・。


「どうかしましたか?」

黙り込む私の顔をじっと見つめる安室さん。


「・・・大丈夫です。少しぼーっとしてました」
「そうですか、表情が曇っていたので何か気に障ることを言ってしまったのかと・・・」

また見たことのない表情・・・。
こんな風に申し訳なさそうに眉を下げる彼を私は知らない。

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