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映画を見終わり暇を持て余した私は、特に行き先も決めないままふらふらと街を歩いていた。
あまり来ることのない街で人の流れに身を任せるように、歩いていると道の端で何かを探しているような女子高生の姿が目に入る。
何か困ってるのかな・・・?
一度はそのまま通り過ぎようかと思ったものの、すれ違ったときの彼女達の必死な表情が頭に残り思わず声をかける。
「あの・・・、何か探しものですか?」
*
「「本当にありがとうございました!」」
とても大事なストラップを落としたという彼女達。
そのまま放っておくなんてできず、一緒になって探すこと数十分・・・・・・、やっと道路脇の植木の影に落ちていたそれを見つけることが出来た。
「気にしなくていいですよ。大事なものだったみたいだし、見つかって本当によかったね」
笑顔でそう言うと、髪の長い女の子はぎゅっとストラップを握りながらもう一度私に頭を下げる。
「何かお礼をさせていただけませんか?」
「そうよね、わざわざ一緒に探してくれたんだし」
もう一人の女の子もそれに同意する。
「そんなの気にしなくて大丈夫よ。特に予定もなかったし!」
「けど・・・・・・っ、「あ!じゃあ飲み物を一杯だけご馳走させてもらえませんか?暑い中探してもらったし!お時間大丈夫ですか?」
申し訳なさそうに眉を下げる髪の長い女の子の言葉を遮り、私に尋ねる髪の短い彼女。
うーん・・・、このままここで別れたら逆に気を遣わせちゃうかな・・・。
「じゃあ一杯だけご馳走になろうかな」
私がそう言うとパッと笑顔になる二人。
「やった!じゃあ行きましょ!」
「あ、ちょっと待ってよ園子!」
私は二人に腕を引かれながら、彼女達の行きつけだという喫茶店へと向かった。
*
彼女達に連れられてやってきたのは落ち着いた雰囲気の喫茶店だった。
てっきり今どきの女子高生だから、キラキラした賑やかな場所だったらどうしようと思っていた私は、心の中で安堵のため息をつく。
「いらっしゃいませ!」
笑顔の素敵な可愛らしい店員さんに迎えられ、奥のテーブル席へと通される。
「素敵なお店ね」
「私この上に住んでるんですよ。だからよく来るんです」
「この上って・・・・・・毛利探偵事務所?」
「はい、そうなんです」
「この子の父親があの眠りの小五郎なんですよ!」
「えぇ!すごい、有名人だ!」
自己紹介を交えつつ、他愛もない話を楽しんでいるとなにやら店の入口が騒がしくなる。
「あ、もしかして安室さんじゃない?」
「安室さん?」
「この店の店員さんなんですけど、かなりイケメンで女子高生とかにモテモテなんですよ」
そんな園子ちゃんの言葉につられて入口に視線を向ける。
「・・・・・・・・・っ?!」
思わず手に持っていたグラスを落としそうになる。
そこに立っていたのは、つい数時間前まで一緒にいた彼だった・・・。
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