▽ 1-1
───・・・・・ I love you. You’re my only reason to stay alive.
「1回でいいからこんな台詞言われたい・・・」
お気に入りの恋愛映画を自宅で見ていると、思わずそんな言葉が口からこぼれた。
「現実でこんな歯の浮くような台詞を言う男なんていないだろ」
夢見心地な私の世界をぶち壊す一言が隣から聞こえてきて、思わずそちらをキッと睨む。
「はぁ・・・・・・、零も見た目だけならこういう台詞似合うのに・・・」
「悪かったな、こんな性格で」
ぱしんと私の頭を軽く叩く彼。
「たまにはこういう甘くて優しい言葉を可愛い彼女に言ってあげようかな〜ってならない?」
「ならないな、残念ながら。それに可愛い彼女ってどこにいるんだ?」
「もう、零の馬鹿」
甘えるように彼の腕に擦り寄ってみるも、全く効果はないらしくばっさりと切り捨てられる。
「私もたまには優しくされたいー!」
「はいはい、じゃあ俺は仕事の用意するから。なまえはゆっくり映画の世界に浸ってろ」
そう言いながら私の腕をするりと解いて立ち上がる彼。
バタン、とドアが閉まり彼が部屋を出たのを確認すると小さくため息をつく。
別に今の彼に不満があるわけではない。
付き合い始めて早数年、1年ほど前から一緒に暮らすようになり良くも悪くも新鮮味がない。
そりゃなんだかんだ言いつつも優しいことは分かってる。
詳しくは知らないけど、仕事で忙しそうにしてても必ず私の所へ帰ってきてくれる・・・・・・それが大切に思ってもらっている何よりの証拠だろう。
視線をテレビに戻すと、ちょうど主役の二人が愛を語り合うシーンでまた気持ちが沈むのが分かる。
「私も愛されたいー!!」
「うるさい、隣の部屋まで聞こえてるぞ」
思わずクッションを抱きしめながら叫ぶ私に、いつの間にか部屋に戻ってきた零が少し呆れた視線を向ける。
うう、その視線が辛い・・・。
「じゃあ行ってくる」
そう言いながら車の鍵を手に取り、玄関へと向かう彼を追いかける。
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「あぁ、また帰る前に連絡する」
淋しいな・・・・・。
せっかくの休日、やっぱり隣に彼がいないことに慣れることはない。
「いい子で待ってろよ」
ぽんっと私の頭を撫でると、返事を待たずに部屋を出ていく零。
「・・・・・・ずるい」
彼が撫でた頭にそっと触れる。
映画で見た優しくて甘い台詞の何倍も胸がときめく。
やっぱり今のままが一番なのかも・・・・・・
「・・・って!また絆されてる!」
我ながら単純すぎる・・・。
一人ぼっちの部屋に私の声が淋しく響いた。
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