置き去りの恋心 | ナノ
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▽ 何度だって思い出す


まるで動物園のパンダにでもなった気分とは、まさにこんな感じなんだろう。


「へぇ、この子が降谷ちゃんが一目惚れした子かぁ♪」
「零があんな風に女の子に声掛けるなんて初めて見たよ」


零くんとデートの約束の日。
同期の人達が私に会いたいと言ってくれているから、少しだけ会ってくれないか?と零くんに聞かれた。

私も彼が楽しげに話す同期の人達には1度会ってみたかったから、一緒に昼ごはんを食べようという話になった。




そして待ちに待った当日。


零くんのお友達はみんな背が高くて、囲まれると・・・なんというか圧がすごい。さらっと自己紹介をされたあと、諸伏さんと萩原さんに挟まれた私。近いその距離に思わず身を引く。


「コンビニ強盗の時以来だな。元気だったか?」

そんな時、そっと私と彼らの間に入ってくれたのはコンビニ強盗のときのあのガタイのいい人だった。


いかつめなその見た目とは裏腹に、優しく笑う伊達さんは私のことを覚えていたようだった。



「あの時はお世話になりました。それに皆さんも助けてくれてありがとうございました」
「俺達は当たり前のことをしたまでだ。あの状況で周りの人間を気遣える君の方がすごいさ」
「うんうん、そういう所に零も惹かれたんだよね」
「っ、おい、ヒロ!」
「あれあれ〜?降谷ちゃん顔赤いよ?」


諸伏さんと萩原さんに左右から揶揄われる零くん。そんな彼の姿を見るのは初めてで、思わずくすりと笑みがこぼれた。


いつも凛としている彼が同期の彼らといる時は、ただの男の子に見えて。


可愛い、なんて言ったら拗ねるんだろうなぁなんて心の中で呟く。



「なんか普通だよな、アンタ」
「え?」
「零が一目惚れしたって聞いてたから、年上美人のお姉さん系かと思ってた」


そんな彼らの輪からから少し離れ、隣りから聞こえた言葉に振り返る。悪戯っぽく笑うその人は、たしか松田さん・・・だよね?


なんというか・・・・・・、


「めちゃくちゃ失礼なこと言われてる気がする!」
「ははっ、冗談だよ、冗談」
「零くんと比べたら普通≠ネことくらい自分が1番分かってるもん」


零くんは普通≠ニいう枠に当て嵌めるには、多くのものを持っている人だから。


整った容姿に、勉強だってできる。警察学校だって全科目オールAで入学したと聞いた時は開いた口が塞がらなかった。

それに加えて正義感があって、真っ直ぐな人。


普通≠ネ私にはもったいないくらい。



べーっと舌を見せると、彼はケラケラ笑いながら萩原さん達に揶揄われている零くんに視線を向けた。



「零と班長から聞いたよ。アンタがガキの為にあの強盗犯に食ってかかったって。ンなことできる奴は、普通≠カゃねェから安心しろ」




これが私と陣平くんの初めての会話だったね。


この時から貴方は、私の中の小さなモヤモヤをすくい上げてくれる・・・・・・そんな人だった。


口は悪いし、素直じゃないけど、きっとすごく優しい人。



だから私はきっと陣平くんに甘え過ぎてたんだ。

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