置き去りの恋心 | ナノ
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▽ 引き裂かれた今


それは松田がゴンドラに乗ってしばらくした頃におきた。



辺りに突然響いた爆発音。爆発したのは、ゴンドラじゃなくて、近くにある制御室だった。


咄嗟に隣にいたなまえちゃんを爆風から庇う。



「っ、大丈夫か?」
「うん・・・、今の爆発って・・・」


みるみる顔色が悪くなっていく彼女。その視線は、大きな音を立てピタリと止まったゴンドラに向けられていた。



急に止まった衝撃でゆらゆらと不安定に揺れるゴンドラ。松田が乗った72≠フゴンドラは、てっぺんを過ぎ残り4分の1周のところで揺れていた。



ポケットに入れていた携帯が震える。



着信 松田 陣平



慌てて通話ボタンを押す。




「っ、松田?大丈夫なのか?」
『お前がそんな焦った声出すな。なまえが近くにいんだろ?アイツが怖がっちまう』

自分でも気付かないうちに声色が焦りを帯びていた。


隣にいるなまえちゃんは、不安そうな顔で俺を見ていた。


小さく息を吐き、どうにか心を落ち着けゴンドラを見上げる。



「そっちの状況は?爆弾はあったのか?」
『あぁ、ビンゴだった。しかもさっきの爆発で水銀レバーのスイッチが入っちまってよ。めんどくせぇもん仕掛けてくれたな』
「・・・・・・バラせるのか?」
『バーカ、残り時間もまだあるし、こんなの3分もあれば・・・っ、』



松田ならバラすなんて余裕だろう。


でも不意に言葉に詰まったアイツに、嫌な予感がしたんだ。




『勇敢なる警察官よ・・・・・・』


俺がお前の立場でも、同じ選択をしたと思う。



でも俺はお前にだけは、その選択をしては欲しくなかったんだ。



『君の勇気を称えて褒美を与えよう。もう一つのもっと大きな花火の在処のヒントを・・・。表示するのは爆発3秒前。健闘を祈る』
「っ、何言ってんだよ!」
『液晶パネルにたった今表示されたメッセージだ。爆弾を止めて電源が落ちるとそのヒントは二度と拝めなくなっちまうらしい』


きっとお前は、自分の命よりもその他大勢の命を選ぶから。


『3秒前になったらメッセージ送るわ。電池切れそうだし』
「っ、ふざけんな!馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ!」
『お前だって分かるだろ?あの予告状の戦友の首と円卓の騎士が示す場所。あれは病院だ』
「まだ時間はある!しらみ潰しに探せば・・・っ、」
『そんなことすれば遠隔でドカンだろうな。何が最善か、萩原。お前が分からねェはずないだろ』


頭と心がちぐはぐになったみたいな感覚。


理解はできているのに、心が追いついてこない。



『なまえのこと頼むわ。吹き飛ぶとこなんて見せたくねェし、避難させてやってくれ』


携帯を握る手に力が入る。


隣から感じた視線。俺の焦った声で色々と察したのかもしれない。


なまえちゃんのその大きな瞳はゆらゆらと不安げに揺れ、俺の服を掴んでいたその手は震えていた。



「・・・・・・好きな女を、他の男に任せてんじゃねぇよ」
『っ、』


俺はそのまま携帯をなまえちゃんに渡した。

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