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▽ 過去拍手SS



※もし出会わなければ の番外編SSです。時系列などなど割と適当ですが、完結後以降のお話です。





大きな口を開けたカボチャが街に並ぶ季節がやってきた。




「はぁ・・・・・」


リビングで携帯を触っていた零くんが珍しく大きなため息をついた。


気だるそうに額に手をあてながら、ぽいっと携帯を机の上に置いた彼。普段あまり見せない仕草を不思議に思いながら、先程いれたばかりの紅茶を両手に持ち彼の隣へと座る。



「どうかしたんですか?」
「・・・・・・これ」


尋ねていいものか悩みながらもそう聞くと、机の上に置かれた携帯を渡される。


これは見ていいってことだよね・・・?


普段彼の携帯なんて見ることはないので、なんだか変な気分だ。そんなことを考えながら携帯を見ると、表示されていたのはメッセージの画面。


メッセージの送り主は、梓さんだった。


『ハロウィン当日は仮装必須ですよ!店長が忘れないように安室さんにも言っておいてくれとのことでした!当日楽しみにしてます(^^)』


なるほど。


彼のため息の原因はこれらしい。


「・・・・・・めんどくさい」


小さくそう零した彼の姿を見て、思わずくすりと笑顔がもれる。



たしかに彼がウキウキでハロウィンを楽しんでいる姿は想像し難いかもしれない・・・。



「零くんならどんな仮装しても似合いそうなのにもったいない。私も零くんの仮装見たいな」



思わず口から出た本音。きっと彼はどんな服装でも格好良いだろう。


「・・・・・・お前は何がいいと思う?」


仮装をすることに対してはもう観念したのだろう。携帯で某通販サイトを見ながら、ハロウィンの衣装を検索し始めた零くん。


小さな携帯の画面を覗き込みながら、二人で画面を追う。


「あ!これ格好良い!絶対似合いそう!」
「じゃあこれにするか」


私の一声で決まったハロウィンの衣装。


絶対似合う。当日それを着た彼を想像するとなんだか頬がゆるむ。


「何ニヤニヤしてるんだ?」
「これ着てる零くんは絶対格好良いんだろうなって思ったらにやけちゃった」


そんな私の言葉を聞いて少し恥ずかしそうに目を逸らした彼。


可愛い。

そう思ったのは、私だけの秘密だ。







ハロウィン当日。


ポアロで着替えるのは面倒臭いからと、私の家で衣装に着替えた零くん。


彼が頼んだのは、ドラキュラの衣装だった。


とはいっても、さすがにマントを羽織っていくわけにはいかないので今は黒のパンツに白いシャツ、そして臙脂色のベストを着ているだけだ。


すらりとした彼にその衣装はぴったりだった。マントなしだとドラキュラというより、お洒落なスーツ姿に見える。


着替えを終え、鏡の前で一緒に頼んだ牙をつけている零くんの後ろ姿を見る。


「・・・・・・格好良い」


思わず零れたそんな呟きに彼が振り返る。



「マントなしだとただのスーツみたいだな、これ」


襟元を正しながら、ふっと笑った彼の口元には普段はない小さな牙がのぞいていた。


「その牙もすごく似合ってるよ、がおーって感じ!」


我ながら乏しい語彙力だ。


そんな私の言葉を聞いた彼は、少し悪戯な笑みを浮かべながらこちらに近づいてきた。


「がおーってことは、襲ってもいいってことか?」
「・・・なっ!」
「ふっ、冗談だよ。顔が真っ赤になってるぞ」


零くんの手がぽんっと優しく頭を撫でた。


そりゃ真っ赤にもなるだろう。スーツ姿の彼は格好良いし、ちらりと除く牙は色気だってある。あんなふうに近づかれたら、頬が熱を帯びるのは当然だ。


「ねぇ、髪の毛少しだけいじってもいい?」


ふと気になったのは彼の前髪。
特にいつもと変わらずサラリとした前髪が彼の額にかかっていた。


「あぁ、別に構わないけどどうするんだ?」


私が届きやすいように少しだけ腰をかがめてくれた零くん。


私は洗面台にあった彼のワックスを少しだけ手に取ると、前髪にそっと触れた。


「・・・・・・んーっと、ここをこうして、うん!できました!」


くるりと彼を鏡の方へと向かせる。


そこに映るのは、普段とは違う髪型の零くん。



「前髪こうやって分けてる方が今の服装には合う気がするの、変かな?」


いつもは隠れている額が見えて、なんだか普段より妖艶な感じといえばいいのだろうか。


上手く言葉で説明できないのがもどかしい。



「お前がこっちの方が好きならこれで行くよ」


そう言って笑った零くん。


「・・・・・・っ・・・」


その笑顔が大人の色気が漂っていて、また頬に赤みがさす。



そんな私を見た零くんが、私の背後にあった壁にそっと右手をつく。必然的に壁際に追いやられた私。目の前には零くん、後ろには壁。これでは逃げ場がない。


「やっぱり顔が赤いな」
「私のことからかってないで、早く行かなきゃダメですよ・・・!」
「ん、わかってる」


そう言いながらも彼の顔が私の首筋へと近づいてくる。



チクリ。


首元に走った小さな痛み。


「・・・・・・っ、」
「ごちそうさま」



そう言った彼は私から離れ、リビングへと向かう。恐らく準備の続きだろう。


どきどきと早鐘を打つ心臓を抑えながら、ちくりと痛んだ首筋を鏡に写す。


「・・・・・・あ、これ・・・っ!」


そこには小さな歯型がふたつ。


恐らくこれは彼の牙。



「・・・・・・ドラキュラだからな。がおー」


いつの間にか私の後ろに来ていた零くん。先程の私の言葉を真似した彼が、こちらを見ながら笑っていた。




Trick or Treat!!


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