▽ 0-3
「はじめまして。みょうじ なまえです」
仕事モードに近い笑顔を作りながら自己紹介をし合コンが始まる。
「ちょっとなまえ〜?さっきから飲んでばっかりじゃん!もうちょっと話そうよ〜!」
「そうだよ。さっきからなまえちゃん飲んでばっかりで、俺らと全然話してくれないもん!もっと仲良くしようよ〜!」
酔いがまわった友人が絡んでくる。それに合わせたように、向かいに座る彼らも私に話を振ってくる。
「ちゃんと話は聞いてますよ!面白くてついつい話すタイミング逃しちゃってました」
確かに顔はイケメンなのかもしれないけど・・・・・・こんな下心が見え隠れする会話のどこが楽しいんだろ。そんな本音は隠しながら、この場をセッティングしてくれた友人の顔に泥を塗らないように笑顔で答える。
こんなことなら家で漫画読んでた方がよっぽど癒されたはず・・・・・・。
友人には悪いが、そんな考えが頭によぎる。
酔ってでもなければこの退屈な状況をやり過ごせないと判断した私は、どんどん飲むペースをあげていく。時間とともに目の前には空いたグラスが並んでいく。
お酒は人並みにしか飲めない私が、そんな飲み方を続けているともちろん酔っ払うわけで・・・。
やばい、グラスが揺れて見えてきてる・・・・。らちょっと飲みすぎたかかもしれない、くらくらする。
「なまえちゃん結構飲むんだね!・・・でも大丈夫?ちょっとフラフラしてない?」
目の前に座る彼も私と同じくらい飲んでいるのはずなのに、顔色一つ変わっていない。
「ちょっと2人で外の空気でも吸って、ちょっと休憩しよう?この店って外にテラスもあるんだよ。」
そう言いながら、もう1人の男性にアイコンタクトを送る彼。
2人きりになんてなったら、面倒くさくなりそうな予感しかしない・・・・・。
「まだ平気ですよ〜!でもちょっと御手洗に行きたいので行ってきますね!」
肩に手をまわそうとしていた彼の横をすっと通りぬける。
この場を離れるのは友人に悪いかなと思いつつも、彼女はもう1人の男性と笑いながら話しているから平気だろうと判断し席を外す。
向かう先は、トイレではなく非常階段と書かれた扉。トイレから出たところでさっきの彼が待っていたなんて展開はごめんだ。少し外の空気を吸えば、酔いも覚めるだろうと思い非常階段の扉を開ける。
ギィーっという音と共に錆び付いた扉を開けると、少し冷たい風が頬をなでる。
手すりにもたれながら、その冷たい風をあびていると先程までの気持ち悪さが少し和らぐ。
「やっぱり合コンとかって、私は向いてないな〜」
そもそも仕事以外で初対面の人と話すのって苦手だし。
そんなことを考えつつ手すりのから少し身を乗り出すと、目の前には色鮮やかなネオンが広がっている。そこを楽しそうに歩いているたくさんのカップルらしき人達。
羨む気持ちがないといったら嘘になるけれど、簡単に次の恋愛に進む気持ちにはなれずにいた・・・・・・。
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