▽ 7-1
「・・・・・・んー・・・」
カーテンの隙間から差し込む太陽の光の眩しさに思わず目をこする。
ここで目を覚ますのは2回目だ。
でも前回ここで朝を迎えた日より、随分と気持ちは晴れやかだ。
携帯を手に取り、時間を確認すると前回よりは早く起きることができたようだ。
*
階段を降り書斎に向かい、扉をノックする。
「あぁ、起きたか。おはよう」
「おはようございます。昨日は本当にすいませんでした・・・・・・」
読んでいた本から視線を外し、笑顔を向けてくれる彼に、私は昨夜の醜態を思いだし思わず俯いてしまう。
「前にも言っただろう?そういうときは、謝罪より礼の方が嬉しいものだ」
「・・・っ、はい・・・そうですよね」
「はい、じゃあやり直し」
「昨日はありがとうございました」
感謝の気持ちを伝えると、赤井さんは本を閉じ私の前までやってくる。
「よし、それでいい」
ぽんっと私の頭を撫でると、朝食にしよう。と書斎を出てリビングに向かう彼。
やっぱり敵わないなぁ・・・。どこまでも優しい赤井さんに感謝してもしきれない思いを抱えながら、彼の背中を追いかけた。
*
ピンポーン
赤井さんお手製の朝ごはんをご馳走になったあと、せめて片付けくらいは・・・と、洗い物をしていたとき玄関のチャイムが鳴る。
ちょっと行ってくると、赤井さんが変声機のスイッチを入れ玄関に向かう。しばらくすると何やら賑やかな声が近づいてくる。
「あー!やっぱりあの時のお姉さんだ!」
「やっぱり姉ちゃんと昴の兄ちゃんは知り合いだったんだな!」
キッチンの扉が開かれるとともに、子供たちが私の元へと走ってくる。
「君たちはこの前のポアロの・・・?」
ぱたぱたとこちらに走ってきたのは、先日ポアロで会った少年探偵団の3人組だった。
「これこれ、走るでない」
そんな子供たちの後ろから、昴さんと阿笠博士が続く。そして博士の足元には、昨日ぶりに会うあの小さな名探偵の姿があった。
「あれ?昨日のお姉さんだよね?」
なんだろう、この探られるような視線は・・・。
足元に寄ってきて、私を見上げるコナン君に思わず顔がひきつりそうになるのを、寸のところで堪える。
「お姉さんは昴さんのお友達?」
私と昴さんって友達・・・・・・なのかな?なんだか友達なんて言ってしまうのは恐れ多い気がする。
「えーっと・・・お友「はい、そうですよ。彼女は私の大切な友人です」
大きな瞳をきらきらさせながら尋ねてくる歩美ちゃんに、なんて返事をするべきか悩んでいると、隣にきた昴さんが私の答えを奪う。
「彼女じゃねーのか?」
「元太くん!いきなりそんなこと聞くのは失礼ですよ」
「だって光彦も気になるって言ってたじゃねーか!」
「それは・・・っ」
「もう2人とも喧嘩しちゃだめでしょ?」
一気に騒がしくなったリビング。どうやら彼らの興味は私と昴さんの関係にあるらしい。
「えっとね、私と昴さんは恋人同士じゃなくてお友達なの。みんなも昴さんのお友達かな?」
子供たちに向かい合うように屈みながらそう言うと、彼らは納得したようで自分たちのことを話し始めた。
「俺たちは少年探偵団なんだぜ!」
「昴さんとは事件がきっかけで知り合ったんです」
「お姉さんも困ったことがあったら、歩美たちに相談してね!なんでも解決しちゃうから!」
可愛いなぁ。そんな3人の姿に癒されていると、いつの間にか飲み物を用意しに行っていた昴さんとコナン君がリビングに戻ってくる。
「はい、みんな。オレンジジュースでよかったかな?」
「わーい!ありがとう」
「いただきます」
「わしの分まですまんの、昴君」
人数分の飲み物を配り終えると昴さんが本題に入る。
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