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▽ 3-1



この世界に来てから1週間が過ぎた。


あれから赤井さんは何度か連絡をくれていた。

「変わったことはないか?」

「困っていることはないか?」

この世界に私の事を知ってくれている人がいる、気にかけてくれている人がいる、その安心感は計り知れないものだった。


そんな彼の優しさに報いるためにも、早く仕事を見つけて安心してもらわなきゃいけない、そんな思いからこの1週間は仕事探しに追われていた。


元々働いていたアパレルショップは、当然ながらこの世界には存在していなかった。

どうせ働くなら接客業がいい。そんな思いから仕事を探していたら家の近くの喫茶店が求人を出しているをと知り、面接の約束を取り付けたのが一昨日。今日がその面接日だ。


「よし!頑張ろう!」

ぱんぱん!と両頬を軽くたたき気合いを入れるとカフェの扉を開く。



お店を出ると茜色だった空はすっかり暗くなっていた。


「もしもし、昴さん?仕事決まりましたー!!」

ちょうど前のバイトの子が辞めたばかりで人手不足だったということもあり、すんなりと採用が決まった。今後の予定などを話していたら、思っていたより時間が過ぎてしまっていたのだ。

「おめでとうございます。よかったですね」

働く場所が見つかった喜びを誰かに伝えたくて昴さんに電話をする。

この1週間で彼との距離は少し縮まったと思う。その証拠に「名字で呼ぶのは他人行儀な気がする」と言う彼の一言で、沖矢さんから昴さんに呼び方が変わった。

さすがにまだ赤井さんの事は恐れ多くて名前でなんて呼べないけど、なんとか昴さんと呼ぶのには慣れてきた。

昴さんと他愛もない話をしながら、喫茶店がから自宅までの道を歩く。


「ではお祝いに、一緒に夕食でもどうですか?」
「私は大丈夫ですけど、昴さんはお時間とか大丈夫なんですか・・・?」

嬉しい誘いだけど彼は忙しいはず。そんな彼に私の為に時間を割いてもらうのは申し訳ない。


「大丈夫ですよ、ちょうど今外にいるので15分くらいで迎えに行けますがいかがでしょう?」
「はい!じゃあマンションの下で待ってますね」

電話を切るとちょうどマンションの前に着く。あと15分か、ならここで待っていよう。そう思った私はマンションの前にある公園のベンチに腰を下ろす。

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