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▽ 2-6



好きと言ってもファンですよ!と昨日と同じようなやりとりをしながら、どうしても気になった疑問を口にする。


「なんで私が彼のことを好きだと思ったんですか?」

赤井さんとの会話の中で、特定の誰かが好きだとは言った覚えがない。ただ私の知る物語を話しただけなのに。


「君は物語として僕達のことを話すとき、一貫して物語の流れを客観的に説明してくれていました。ただ彼が関わる時だけ僅かに君の主観が入っていた、それだけ彼に対して思い入れがあるということ。

だから何か特別な気持ちがあるのかなと、なんとなくそんな気がしただけですよ」


自分では全く意識していなかったことを見抜かれ、さすが赤井さんとしか言いようがない・・・・・・。


「さぁ、着きましたよ」

そんな話をしている間にマンションに着く。見覚えがあるかと問われると、私が住んでいたマンションに似ている気がする。


エントランスに入りオートロックの扉の前に立つ。ここの303号室が私の部屋らしい。


「・・・・・・嘘、開いた」

駄目元で鞄から鍵を取り出し鍵穴に差し込むとカチャっとオートロックの扉が開く。先に中に入る沖矢さんの後ろに戸惑いながらも続く。


「鍵を貸してくれますか?」

303号室の前に立つとそう言ってこちらに手を出す沖矢さん。その手にそっと鍵をのせる。


カチャッ

「先に入っても大丈夫ですか?」
「はい、お願いします・・・」

沖矢さんが玄関を開けると、そこは正真正銘私の部屋が広がっている。置いてある家具も間違いなく私が選んだものだ。

クローゼットなどを開けてみてもそこに入っているのは私の私物。やっぱりここは私の部屋なんだ・・・・・・そう思っていると1番この部屋で存在感のあったものがないことに気付く。


「・・・・・・ない」

あの大きな本棚が無くなっていた。


「何がないんですか?」

危険がないかベランダやキッチンなどを確認していた沖矢さんが戻ってくる。


「・・・・・・漫画を片付けていた本棚だけが無くなってるみたいです。それ以外は間違いなく私の部屋です・・・」
「そうですか・・・。今ベランダなどを見てきましたが、特に不審な点はなかったです」
「・・・ありがとうございます」


沖矢さんにお礼を言いながら現状を理解しようと努力する。

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