▽ 2-5
マンションに行くなら昼間の方がいいだろう、赤井さんにそう言われ急いで準備をする。
確かに夜の米花町は、より物騒さが増しそうだ。いくら赤井さんが付き添ってくれるとはいえ、事件に巻き込まれることは避けたい。
先に外で待っていると言う赤井さんを追いかけるように玄関の扉を開けると、目の前には真っ赤なスバル360。
「・・・本物だ〜!!!」
目の前の車とその脇に立つ沖矢さんのツーショトに思わずテンションが上がる。
「少しは元気が出たようですね」
声も口調も沖矢さんモードの赤井さんは、そう言いながらそっと助手席の扉を開けてくれる。
「はい!まさか自分が助手席に乗れるなんて夢みたいです・・・!」
「はは、それはよかったです。では早速行きましょう」
沖矢さんは笑いながら運転席に乗り込むと、目的地のマンションに向けて車を走らせる。
*
助手席から窓の外を見ると、そこには漫画で見たことのある風景が広がっていてる。
昨日は周りをじっくり見る余裕なんてなかったけれど、改めて見てみるとここが名探偵コナンの世界だと実感する。
「どこか寄りたい場所でもありますか?」
ちょうど赤信号にひっかかり車を止めた沖矢さんが外を眺める私に尋ねる。
「いえ、特には。ただ明るい時間にこうやって見ると本当に違う世界なんだなぁと改めて感じてました」
「なるほど、そうですか。てっきり僕はあの茶髪の彼を探しているのかと思いました」
ちらりと悪戯な笑みをこちらに向けたかと思うと、ちょうど信号が青になり沖矢さんはまた前を向き車を進める。
「茶髪の彼・・・・・・ですか・・・?」
誰のことかピンとこなくて尋ねる。
「ええ、確か今はポアロで働いているはずの・・・「降谷さんのことですか?あ、いや安室さんか!なんで急に?!」
なんで急に降谷さんの名前が出てくるの?不意に沖矢さんの口から出た彼の名前に思わず動揺してしまう。
「君は本当に面白い反応をしてくれますね。昨日や今朝の話ぶりからおそらく好きなんだろうと思ったんですが違いましたか?」
なんでバレてるの。私普通に話してたつもりなのに・・・・・・。恥ずかしさからか顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
「なんでそんなになんでもお見通しなんですか・・・・・・」
もうこの人怖い。もしかして私ってそんなに分かりやすい性格してるとか?
1人で自問自答していると、「確かに分かりやすい性格なのかもしれないな」と隣から笑い混じりの声が聞こえる。
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