▽ 2-4
「落ち着いたか?」
どれくらいの時間が経ったのだろう、取り乱す私に対して赤井さんは何も言わずただ隣にいてくれた。
「・・・・・・はい、大丈夫です」
いつまでも悩んでいたって仕方がない、帰れないならここで生きていく算段をつけなきゃいけない。このままずっと赤井さんの優しさに甘えるわけにはいかないんだ。
「とりあえず昨日も言ったが、しばらくはここに居ればいい。ボウヤには俺から話をしておく」
そんな私の考えを知ってか知らずか赤井さんはそう言ってくれる。その優しさに甘えたくなる気持ちをぐっと堪えて彼の目を見る。
「私ここに書かれている住所に行ってみます」
赤井さんが調べてくれた私の情報には、今住んでいるというマンションの住所も書かれていたんだ。ここに行ってみれば何か分かるかもしれない。
「同じ米花町内みたいだし、行ってみれば何かわかるかもしれない・・・・・・このまま赤井さんに甘えてばっかじゃ駄目だと思うんです」
赤井さんは何も言わずこちらをじっと見ている。
甘えてばっかじゃ駄目とは言っても昨日から散々かっこ悪いところを見られてるから説得力にかけるよね・・・。
「分かった、君がそういうのならそこに行ってみよう」
「・・・・・・一緒に来てくれるんですか?」
場所だけ教えてもらって、1人で行こうと思っていた私は驚く。
「そこが本当に君の家なのかも分からないのに1人で行かせられる訳がないだろう」
「赤井さんは優しいですね・・・・・・」
もちろん純粋な優しさだけではないんだろう。私の存在が他の誰かに露見するのは好ましくない、だから目の届く範囲に置きたい。そんな気持ちもあるのだと思う。
「優しくはないだろう、君だってそれくらいは気付いているはずだ」
それでも・・・・・・、
「赤井さんはやっぱり優しいですよ!私のヒーローに間違いないです!」
私は笑顔で彼にそう伝えると、彼は何も言わず口元に小さく笑みを浮かべるのだった。
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