▽ 2-3
「見せたいものがあるんだ」
朝食を終えてひと息ついたところで赤井さんが書斎からクリアファイルを持ってくる。
目の前に置かれたファイルには数枚の紙がまとめられていて、1番上には私の名前がある。
「これは・・・?」
みょうじ なまえ 24歳 女性・・・・・・そこには生年月日や出生地、今までの経歴など私の情報がつらつら書かれている。
「昨夜君の事を少し調べさせてもらったんだ、ここに書いてある人物は確かに君だろう?」
赤井さんは目の前の書類を指さす。
そこに書かれていることは紛れもなく私のこと、書かれた家族構成や生い立ちも私自身のものだった。
「・・・・・・嘘・・・・・」
どういうこと?私がこの世界に存在していたってこと?1度は落ち着いていたはずの頭がまたぐちゃぐちゃになる。
いったい自分が誰なのか、どこの世界の住人なのか、そんな当たり前に分かるはずのことすら今の私には分からないんだ。
「
・・・・・・おい!・・・っ?・・・なまえ?大丈夫か?」
私の名前を呼ぶ赤井さんの声で我に返る。
「・・・・・・どういうことなんでしょうか・・・ここに書かれているのは間違いなく私のことなのに・・・どうして・・・・・」
すると赤井さんは席を離れ、目の前にくると真っ直ぐに私の目を見る。
「落ち着け。俺が調べたこの人物は間違いなくこの世界に存在している。でもお前が昨日話してくれたことは、普通は知らないことだ、だからお前が嘘をついているとは俺には思えない。悪いようにはしない、昨日も言っただろう?」
私を落ち着かせるようにゆっくりとそう言う彼は、やっぱり私にとってヒーローみたいな存在だ・・・・・・。
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