▽ 2-2
「・・・ふっ、君の回答は予想の斜め上をいくな」
急にこんなことを言われるとは思っていなかったんだろう、赤井さんはクスクスと笑う。
やっぱり言うんじゃなかった・・・・・・後悔しつつもこんな風に笑うところを見れたことに喜んでしまう。
「・・・っでも!あれですよ?好きって言ってもそういうのじゃなくてファンです!ファン!」
その笑顔に思わずこちらが照れてしまい慌ててそう付け加える。
「私にとってこの世界の人達はヒーローみたいというか、憧れというか・・・・・・とにかくこうやって話せているのが夢みたいな存在なんです・・・!」
「ほぉー、それは光栄だな。そのヒーローみたいな存在が俺だけじゃないのが残念だ」
「・・・っいや!そういう訳じゃないですよ?赤井さんはいつでもかっこいいです!!」
赤井さんってこんな冗談とか言うんだ・・・・・・ギャップ萌えだ・・・・・・。昨日よりは幾分か落ち着いた私は彼との会話を楽しみながら朝食の時間を過ごすのであった。
昨日からの赤井さんとの会話で分かったことがいくつかある。赤井さんが関わった事件は順番こそ私が知っている物語とは異なることもあるけれどほぼ原作通りということ。そして今はちょうど緋色の真相が終わった当たりだということ。
緋色の真相か・・・・・・、てことはもうあの人が沖矢さんの元を訪ねてきたあとなんだ。
あの一世一代とも言える腹の探り合いの場に自分が居合わせでもしたら・・・・・・想像するだけで胃が痛くなる。
降谷零。
私があちらの世界にいたとき1番好きだった人。
彼が登場する話は何回読んだか分からないし、映画もアニメも何度も見返した。彼が出てくるたびに一喜一憂していたのを思い出す。
赤井さんを憧れていた人物とするなら降谷さんに対する私の感情はなんなんだろう。
この世界が実在すると知った今、私が彼に寄せるこの気持ちはなんなんだろう・・・・・・恋慕、羨望、畏怖・・・・・・どの言葉もしっくりこない。
ただひたむきに自分の中の正義を全うする彼が少しでも安らぐ時間があればいい。そんなことしか今の私には思いつかなかった。
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