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▽ 1-1



『今日の最下位は山羊座のあなた!発言には注意してね〜。面倒事に巻き込まれちゃうかも!』

「げ、最下位・・・・・・」


眠い目を擦りながら、仕事の用意をしているとテレビから占いを読み上げる元気なアナウンサーの声が聞こえてきた。


どうしてテレビの占いは、朝からこうも人のテンションを下げてくるんだろう。

そう言えばさっき携帯で見た占いも同じような事を言っていた気がする・・・・・・。



『今日も元気に行ってらっしゃーい!』


面倒事に巻き込まれるかも・・・・・・なんて言われて元気に行ってきまーす!ってなれる訳ないでしょ。と心の中でテレビにツッコミを入れる。


ましてこの米花町での面倒事なんて事件しかなさそうで怖い・・・・・・。


そんなくだらないことを考えながらも、そんな理由で外出を控えるわけには行かない私は着替えを手にとる。


まぁ占いなんて所詮占いでしかないしね・・・!


基本的にいいときは信じて、悪いときは気にしないスタンスの私はさほど気にも留めることなかった。





「なまえちゃん!お疲れ様」
「お疲れ様でした。また明日もよろしくお願いします!」


平日にも関わらず大盛況だった店で、右に左にと走り回っている間に私の頭からは朝の占いのことなんてすっかり忘れ去られていた。


店長に見送られながら外に出ると、辺りはすっかり茜色に覆われている。


流石に今日は疲れたな・・・・・・。


これから買い物に行って、ご飯を作って・・・・・・、とそこまで考えたところで心が折れた。


無理だ、今日は何か食べて帰ろう。


こんな日くらいはまったりしたい・・・・・・、そんな思いから私が足を向けたのはあの落ち着いた喫茶店だった。





「いらっしゃいませ!あ、なまえさん!こんにちは」
「こんにちは。一人なんですけど大丈夫ですか?」
「もちろんですよ!カウンターへどうぞ」


にっこりと笑った梓さんに癒されながら、カウンター席に腰掛ける。


「なんだか今日はお疲れみたいですね。大丈夫ですか?」
「ちょっと店が忙しくて・・・、ご飯作る元気もなかったので来ちゃいました」
「それは大変でしたね。任せてください!美味しいもの用意します!」


梓さんに注文をし終えると、入口近くにあった本棚から一冊の雑誌を手に取る。


今日はポアロに来る予定じゃなかったから、いつもの小説は持ってきていない。

時間潰しに先程の雑誌をペラペラと捲る。


「あ!そこの服可愛いですよね〜」

そんな私の手元をカウンター越しに梓さんがのぞき込む。


「ほんとですね!梓さんに似合いそうです」
「えへへ、今度見に行こうかな〜」


元々アパレル系で働いていたこともあり、こういったファッションの話題はやっぱりテンションが上がる。


仕事の疲れも忘れ、梓さんと雑誌を見ながら盛り上がる。

『あなたの好みは何系男子?!』


雑誌も後半に差し掛かると、そんな特集にいきあたる。


「最近って色んなタイプに分かれるんですね〜」
「昔って犬系とか猫系しかなかったですもんね」
「そうそう、懐かしい!」


同世代ということもあり、私達は当時を振り返る。


「なまえさんはどっちが好きですか?犬系と猫系!」
「えー、どっちでしょう・・・・・いまいちイメージがわかないんですよね」
「具体的に身近な人で考えてみたらいいんですよ!」
「身近な人・・・・・・」
「ほら!例えば安室さんとか犬系っぽくないですか?」


確かに・・・。

人懐っこい笑顔で誰とでも当たり障りなく接する彼は、どちらかというと犬系に当てはまるんだろう。


でもそれは安室透のイメージであって、降谷零ではない。
それに降谷さんは犬よりも猫の方がイメージにあっている。


ふと頭の中に安室さんのようにニコニコとしている降谷さんの姿が浮かぶ。


いや!それはない!
なんか底の知れない恐怖を感じる!


そんな映像を頭から追い出すように頭をぶんぶんと左右に振る。


「・・・・・・確かに安室さんは犬系ですね」
「でしょ?猫系は・・・、うーん誰だろう・・・」

梓さんは顎に手を当てながら首を捻る。


猫系・・・・・・。

気まぐれでマイペース、
縛られることが嫌いで掴み所のない性格。


それって・・・・・・、


私の中に一人の男性が浮かぶ。


赤井さんって犬よりは猫っぽいよね。

てことは赤井さんと降谷さんって似てるの・・・・?
うーん、そんなことは無いか。


降谷さんが知ったら激怒しそうなことを考えていると、梓さんが私の前でひらひらと手を振る。


「なまえさん?大丈夫ですか?」
「ごめんなさい、思わず真剣に考えちゃってました」
「なかなか猫系って思いつかないですね〜」
「あはは、そうですね」


心に浮かんだ二人の猫系については触れず梓さんに同調する。


「それで!なまえさんはどっちが好きですか?」
「えーっと私は・・・・・・」


腕を組み宙を見上げ少しだけ考えてみる。

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