番外編 ゼラニウム | ナノ
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▽ 1-2


零の言葉が何故か深く心に残っていて。


家族


憧れなんて大層なものを抱いてもらえるほど、俺はいい父親や旦那ではないかもしれない。

それでもあの2人が何よりも大切で、アイツらの為ならなんだってできるって本気で思うから。


こうやって仕事が休みの日に、家族で過ごせるなんてことない日々が幸せだと思うんだ。



リビングでハロと遊ぶ蓮。音の鳴るおもちゃを蓮が投げ、それを器用にキャッチして持ってくるハロ。自分のところにハロが戻ってくる度に、キャッキャと嬉しそうに蓮は笑っていて。



「いいよな、こういうのって」
「・・・・・・?」


コーヒーを用意しながらカウンターキッチン越しにそんな2人を眺めていると、隣で洗い物をしていたなまえが小さく首を傾げた。


きょとんとした顔で俺を見たかと思うと、なまえの視線はすぐに蓮達の方に向けられる。



「もういっかい!!とってきて!!」
「ワン!」
「えらい〜!すごいね!」


2人を見るなまえの視線がたまらなく優しくて。あんなに生まれる前は不安がっていたのに、今ではちゃんと立派な母親で。


「なまえ」


大切だと、好きだと思うんだ。







「なまえ」


名前を呼ばれ、陣平の方を見ると不意に重なる唇。


優しく触れるだけの口付け。コーヒー片手に満足そうに笑う陣平に思わず顔が赤くなる。



「〜〜っ、き、急に何・・・っ、?!」
「ん?お前の顔見てたらしたくなっただけ」
「・・・っ、」
「ははっ、顔真っ赤だな」



悪戯っ子みたいに笑う陣平に、どくんと大きく脈打つ心臓。


どれだけ一緒にいても、夫婦になって家族が増えても、やっぱり私は今も陣平に恋してるから。


慣れる≠ネんてあるわけがないんだ。




「ママとパパ、ちゅーしてる!」
「ワンワン!」
「ちゅーはね、すきなひととするんだよ?だいじなひととするんだって」


そんな私達を見て楽しげに話す蓮。ハロはその言葉が分かっているのか、小さな赤い舌を出して元気よく鳴く。


「っ、蓮・・・それ誰に聞いたの?」
「けんじ!!!」
「・・・・・・萩原・・・、またそうやって・・・」
「ははっ、萩の言ってること間違ってねェじゃん」


ケラケラと楽しげに笑う陣平は、そのままリビンクに向かい両手を広げた蓮を抱き上げた。


そんな陣平の足元を駆け回るハロ。


「よし!みんなでハロの散歩でも行くか!」
「いくー!!!ぼくひももつ!!」
「ワン!!!」
「ママもいくからはやく!ね!」


目の前に広がる幸せ≠ノ、胸が温かくなるような気がした。




────────────────



「助かったよ。蓮もありがとな」
「ぜろ!またハロちゃんつれてきてね!」
「あぁ、約束する」


松田に抱っこされた蓮が、零の腕の中にいるハロを撫でる。

そのすぐ隣で、なまえは嬉しそうにそれを眺めていた。


「元気そうで安心したよ」
「ヒロもね。忙しそうだし心配してたんだよ?」
「ははっ、ありがと。また落ち着いたら零と遊びに来るよ」


眉を下げてオレを見上げるなまえの姿に思わず笑みがこぼれる。昔の癖で彼女の頭に触れようと手を伸ばした瞬間、


「・・・・・・触んのはナシだ」

なまえの肩を引き寄せたのは、さっきまで零と話していた松田だった。


「ははっ、ごめんごめん」
「そんな子供みたいなこと言わなくてもいいだろ」


そんな松田の言葉に頬を赤らめるなまえと、呆れたように笑う零。


温かくて穏やかな時間がそこに流れる。



「パパはヤキモチやきさんだもんね」
「っ、はぁ?誰がそんなこと言ってたんだよ、蓮!」
「んー?けんじがいってた。パパはヤキモチやきさんで、ママがだいすきって」



「っ、萩原!!!アイツ・・・っ!!」


こんな時間が永遠に続きますように。

松田の怒声や、零となまえの笑い声、不思議そうに首を傾げる蓮。


彼らの笑顔が途切れることがありませんように。



Fin


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