▽ 1-1
※ 本編後、結婚した2人に子供がいる if のお話です。苦手な方はご注意ください。(子供の名前変換なし)
月日が流れるのは早い。
大学生のガキだった俺達もいつしか立派な大人になった。
社会に出て、大人≠ノなっていく周りの奴ら。
まぁ、例外のバカも1人いるけど・・・・・・。
なまえと結婚して5年。
何年の月日が流れても良くも悪くもなまえは変わらない。
口を開けば、二言目には「陣平、大好き!」なんてニコニコしながら抱きついてくる。
それは結婚してからも変わらなくて、まぁそんなアホなとこに癒されてる自分がいることも事実。
「ただいま」
「おかえり〜!!」
「よ!久しぶりだな、なまえ」
「・・・・・げ、萩原」
仕事を定時で終え、たまたま帰りに会った萩と家に帰るとぱたぱたと玄関に走ってくるなまえ。エプロン姿のなまえは、後ろからひょっこり顔を覗かせた萩を見て顔を顰めた。
「メッセージ送っただろ、萩が飯食いに来るって」
くしゃり、となまえの頭を撫で靴を脱ぎ部屋に入る。
「お邪魔します♪」なんて言いながら後ろに続く萩は、月1ペースでは俺の家に飯を食いに来ている。・・・・・・独り身って暇なのか?なんて思わなくもないけれど、口にすると面倒な気がしてやめた。
リビングの扉を開けると、ソファの隣でブロックの玩具を並べて遊ぶ小さな後ろ姿。
「蓮、ただいま」
「おかえり!・・・・・・あ!けんじもいっしょだ!!!」
声をかけると小さな足でぱたぱたと駆け寄ってくるのは、先月3歳を迎えたばかりの我が子。
抱っこ、と両手を広げる蓮を抱き上げる。
「蓮〜!デカくなったなぁ。相変わらず陣平ちゃんのガキの頃にそっくりだ」
萩はそう言いながら蓮の頭をくしゃくしゃと撫でる。
そう、蓮はガキの頃の俺によく似ている。俺の親も同じことを言っていたし、俺のガキの頃の写真と今の蓮を比べるとまぁそっくりだと我ながら思う。
蓮は萩にもよく懐いていて、コイツが遊びにくるとめちゃくちゃ喜ぶ。今だって俺の腕から降りると、そのまま萩の手を引きさっきまで遊んでいたブロックの玩具の元へと走っていく。
「なんか手伝うか?」
「ううん、大丈夫だよ。カレー温めるだけだし」
「皿出しとくわ」
「ありがと。てか私まだただいまのぎゅーされてない!!蓮だけずるい!!」
「・・・・・・ガキかよ、お前は」
呆れたように笑いながらも、両手を広げるなまえをそっと抱きしめる。
昔みたいな甘い香水の匂いはもうしない。長かったネイルも蓮が生まれてからは短くなった。母親になって変わった部分もあるけれど、こういうところは昔から変わらない。
「相変わらずママはパパが大好きだねぇ」
蓮と遊んでいた萩が揶揄うように笑う。そんな俺達をじっと見ていた蓮は、むくりと立ち上がるとつかつかとキッチンにやってくる。
さっきまでニコニコしながら萩と遊んでいたのに、その顔は真剣で。
するりと腕を解いたなまえが蓮の前に腰を下ろし小さく首を傾げた。
「蓮?どうしたの?」
「パパにはなしたいことがあるんだ」
「俺に?」
「うん!おとなのはなし!!」
不思議そうに俺を見るなまえの隣に腰を下ろし、蓮に目線を合わせる。
小さな手でぎゅっと拳を握った蓮は、何かを決意したように口を開く。
「ぼく、ママとけっこんしたい!」
「〜〜っ、蓮!!なに、可愛すぎる!!どうしたの、急に!」
息子の可愛すぎるプロポーズに、目をハートにして喜ぶなまえ。ぎゅっと小さなその体を抱きしめながら感動を噛みしめているようだ。
そんななまえに抱きしめられた蓮は、なまえの肩越しに俺を見る。
「けんじにきいた。ママはパパとけっこんしてるから、ママとけっこんしたかったらパパにいいよっていってもらわなきゃだめだって」
・・・・・・おい、コラ萩。ガキに何吹き込んでんだよ。
ジト目で萩を睨むと、あははーなんて態とらしく笑いながら目を逸らされる。
蓮の顔は至って真剣で、ガキなりに一生懸命色々考えてるんだろう。
親として息子の成長は嬉しい。
でもそれとこれとは話が別だ。
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