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▽ No one reaches out a hand


平凡な幸せでよかった。
別に多くを求めたわけじゃない。


お父さん、お母さん、そして私。

小さな世界だったけれど、確かにそこは優しさに溢れていた。





イギリス人の父と日本人の母の間に生まれた私の容姿は、父の遺伝子を色濃く受け継いでいた。


明るい金髪に色素が薄い青い瞳。

黒髪を綺麗に伸ばした母とは似ても似つかない姿。


それが原因で小さな頃はよく周りに揶揄われたけれど、泣きながら家に帰ってくる私を両親はいつも笑顔で迎えてくれた。


「なまえちゃんも周りの子も何もかわらないわ」
「人には見た目の違いよりもっと大事なことがある。いつかみんなそれがわかるさ」
「だからなまえちゃんはそのままでいいのよ」


優しい二人が大好きだった。


そんな私の世界は、まるで硝子のようにいとも簡単に壊れてしまう。


それは私が中学生になってすぐだった。


────・・・・・・両親が死んだ。


少し出かけてくる、と珍しく私を残し二人だけでどこかへ行った両親。


待っても
待っても
待っても・・・・・・


どれだけ待っても二人が家に戻ってくることはなかった。


下り坂でのブレーキの故障、制御を失った車がそのまま崖の下へと転落したことによる事故死。


周囲の大人達が慌ただしく走り回る様子をまるで何かフィルター越しに見ているかのような気持ちでじっと見つめていた。


葬儀に集まったのは、母の親戚を名乗る数人だけ。


単身日本にやってきた父の親戚とは全く連絡が取れず、誰も来ることはなかった。


葬儀を終えると、何やら周りの大人達が私のことをちらちらと見ながら話していることに気付く。


「娘はまだ子供だろう、どうするんだ」
「誰かが引き取るんじゃないの?」
「うちは嫌よ?あんなどこの男の血が混じったかもわからない子」
「母親には全然似てないのね・・・、見てよあの目の色・・・」



この人達は父のことをよく思っていないのか・・・・・・。

場の空気が私を拒絶していた。


ここに私を心配してくれる人はいない。
みんなが私を否定している・・・・・・。


不思議と涙はこぼれなかった。
現実味がなかったせいかもしれない。
家に帰ればまた笑って二人が迎えてくれるはず・・・・・・。


田舎の良家出身だった母が外国人の父と結婚したことで、家から勘当されていたのを知ったのはもっと後になってからのことだった。


(誰い)


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