You don't know me | ナノ
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▽ Someone help me



平和で穏やかな日々。


どこか気持ちが緩んでいたのかもしれない。


彼と一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、血の通っていなかった自分の心が温度を取り戻していくような気がした。


戻れるわけなんてないのに・・・・・・。





「久しぶりだな、なまえ」


そう言って部屋に入ってきたジンの姿に、すっと体温が下がるような感覚に陥る。

最初こそ彼と対峙する度にこの感覚に襲われていた・・・・・・、けれど月日が経つにつれて何も感じなくなっていたはずだった。


「どうしたの?約束の日はまだでしょ?」
「あぁ。久しぶりに顔でも見ようと思ってな」
「・・・・・・貴方にそんな優しさがあったなんて驚きね」
「ふっ、俺はいつでも優しいさ」


そう言うと私の腕を掴み、ベッドに押し倒す。

優しさなんて欠片も感じることの出来ない口付け。それでも飼い慣らされた私の身体は彼を求めてしまう。


何も考えられない・・・・・・、いつもならここで快楽に溺れてしまう私を現実へと戻したのは、部屋のあちこちに残された彼の痕跡だった。


キッキンに置かれたコップ。
椅子に掛けたままの上着。
机に置かれた読みかけの本。


嫌だ・・・・・・。
ここで過ごした日々が穢れてしまう気がした。


「・・・・んっ、まって・・・・ジン・・っ・」
「黙れ・・・・っ・・」
「・・・やっ・・・んん・・・・」


私の拒絶なんて受け入れてくれる相手ではない。

そしてその快楽に逆らえるほど、私は強くなかった・・・・・・。


馬鹿な私は、この拒絶がジンに違和感を感じさせていた事に気付けなかった。




行為を終え、煙草を一本吸うとそのまま部屋を去っていくジン。


起き上がる気力すらない私は、横目でその背中を見送る。


「・・・やっぱり私は変われない・・・・・・」


何年も流すことのなかった涙がこぼれた。


クスリのせいだろうか、頭がひどく痛む。


誰もいない部屋に一人。

真っ暗なこの部屋に一人でいると、このまま暗闇にのみ込まれるような感覚に襲われる。


怖い・・・・・・。
怖い、怖い、一人は嫌だ・・・・・・。


頭に浮かぶのは、優しく笑うあの青い瞳。


私は無意識に枕元に置かれた携帯へと手を伸ばしていた。


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