▽ Which are you?
「ジンとはどういう関係なんですか?」
久しぶりの再会。
私があの時の少女だと気付かない彼は、怪訝な表情を隠そうともせずそう尋ねた。
私を見るその瞳はとても鋭く、あの頃のような優しさは感じることができない。
なんでこんなに胸が痛むの・・・・・・。
こんな視線を向けられることは初めてじゃない。
もう慣れたと思っていたのに・・・・・・。
*
この家に来た最初の数日間は、私の口からジンのことを聞き出そうとしていた彼だったけれど、一向に話すことのない私を見て諦めたようだ。
いつも彼がこの家に帰ってくるのは、日が沈みきった頃。
「ナマエさん、もう夕食は食べましたか?」
いつものように窓際に置かれたソファで本を読んでいると、彼が私に尋ねた。
私のことなんてほっておいてくれればいいのに・・・・・・。
自炊をするなんて習慣のない私は、いつもお菓子やインスタント食品で食事を済ませていた。
そんな生活力のない私を見かねた彼が夕食を作り始める。
「・・・・・・お人好し」
聞こえないように小さくつぶやくと、私は彼のいるキッチンへと向かった。
*
誰かが作ってくれたものを食べるなんて久しぶりだった。
まして一緒にキッチンに立つなんて初めてかもしれない。
「・・・っ、美味しい!」
作ってくれてありがとう、そう言った私を見て優しく目尻を下げる彼。
無意識なんだろうか・・・・・・、最初にバーボンとして私の前に立ったときとは違う表情。
こんな表情を見たら期待してしまう・・・。
彼はあの頃のまま変わっていないんじゃないか。
やっぱりこの組織にいるのは、何か理由があるんじゃないかって・・・・・・。
ズキッと胸が痛む。
私はどうすればいいの・・・?
ジンに命令された以上は、何も掴めませんでしたなんて報告が許されるわけない。
私の言葉ひとつで彼の未来が変わってしまうかもしれない・・・・・・。
白か黒か。
私はその答えを知るのが怖かった。
(貴方はどっち?)
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