ルー+シラサキ 「ねえっ、ルー、忘れものしちゃった! どこかに花の髪飾り……」 急にお腹が空いた。ぐるるると腹の虫が鳴き、本能がたべろたべろとぼくを急かす。 「が――」 明るい笑顔を振り撒いたシラサキの顔を乱暴に掴みとって、引っぱって、その艶やかな肉の色を穴が空くほど見つめた。 寄ることのないはずの皺も、徐々に恐怖に潤っていく瞳も、なんておいしそうなんだろう! ぼくの意識がおかしくなっていることに、ぼく自身気づきながらも抗えないでいた。――"収容違反"。ここでは単純に脱走とかいなくなったとかで済ますのだけど、つまりそういうことである。 ぼくはイミテーションで、なにか条件が発動して、彼女をオオカミとして食べようとしている―― 「る、る……ぅ。いた、……いたいっ……」 鮮度のあるおにく! こりこりしてそうでおいしそうなおめめ! はやく。はやく。たべたいっ。たべなきゃ! 「る、」 ――いただきます。 [前][目次][次][小説TOP][TOP] [しおりを挟む][感想フォーム][いいね!] |