ルー+シラサキ

「ねえっ、ルー、忘れものしちゃった! どこかに花の髪飾り……」

 急にお腹が空いた。ぐるるると腹の虫が鳴き、本能がたべろたべろとぼくを急かす。

「が――」

 明るい笑顔を振り撒いたシラサキの顔を乱暴に掴みとって、引っぱって、その艶やかな肉の色を穴が空くほど見つめた。
 寄ることのないはずの皺も、徐々に恐怖に潤っていく瞳も、なんておいしそうなんだろう!
 ぼくの意識がおかしくなっていることに、ぼく自身気づきながらも抗えないでいた。――"収容違反"。ここでは単純に脱走とかいなくなったとかで済ますのだけど、つまりそういうことである。
 ぼくはイミテーションで、なにか条件が発動して、彼女をオオカミとして食べようとしている――

「る、る……ぅ。いた、……いたいっ……」

 鮮度のあるおにく!
 こりこりしてそうでおいしそうなおめめ!
 はやく。はやく。たべたいっ。たべなきゃ!

「る、」

 ――いただきます。


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