Patriot 59
崩れ行く街並みの回廊を駆け抜けた先には玉座があった。そこで待ち構えるのは蛍のように体を光らせる魔物だった。
「待ちかねたぞ。いくども我が行く手を遮ろうとした、愚かなる者たちよ。」
自らラプソーンと名乗ったそれは、暗黒神というわりに愛らしい姿をしている。それでも彼から感じる魔力は並ではない。
「さあ、我をあがめよ!身を引き裂くような悲しみを我に捧げるがいい!」
かくして火ぶたは斬って落とされた。
神と名乗るほどなのだからどれほどかと思ったが、それまで戦ってきた強敵とさほど変わらない手ごたえだった。やはり復活した直後で本調子ではなかったのだろうか。問題はその後である。 ラプソーンが液状に溶けたと思ったら、城が崩れ始めたのだ。このままでは瓦礫に埋もれて死んでしまうと、急いで脱出をはかるが、行く先々で魔物が妨害してくる。やっと天井のない場所に出れたと思ったら、巨大ゴーレムが巨大な手で押しつぶそうとしてくるのでかなったもんじゃない。 なんとか魔物たちを退け、神鳥の力でエイト達は空に逃げ飛ぶ。
「見て、あれ!」
ゼシカが指さしたで振り返ると、暗黒城は赤紫の水晶を光らせ、紫の雲に包みこまれた。そのとき巻き起こった突風から何とか逃げ切るものの、雲が晴れたその場には目を疑うような存在があった。
『わが魂はついに最強の肉体を手に入れた。時は満ち足り、今こそ二つの世界を一つに束ねる儀式を行う時。』
倒したと思ったラプソーンは暗黒魔城と一体化し、完全復活をとげたのである。
『いでよ、我がしもべたち!この卑しき世界のなにもかもを喰らいつくすがよい!』
ラプソーンが二つのゲートを開き、そこから闇の世界の魔物たちが一斉に姿を現した。その一部が襲い掛かってくるのをエイト達も必死に避けるが敵が多すぎる。 横から強烈なタックルを喰らった瞬間、神鳥の加護は途切れ重力に従うしかない。
「レティス!」
そんな彼らを救出してくれたのは、闇の世界に閉じ込められていたはずの神鳥だった。予想外の救援にエイトは驚いた声をあげる。レティス曰く、ラプソーンが二つの世界をつなぐ扉を開いてくれたおかげで、彼女もようやくこの世界に戻ってこれたのだという。
『しかし闇の世界から邪悪な魂がこちらの世界に送り込まれてしまったようです。このままでこの世界のあらゆる命が滅ぼされてしまう。』
それを阻止しようにも、黒いオーラに覆われはじめたラプソーンを再び封印するのはもはや不可能だ。ここは一度態勢を立て直すためにも、エイト達はレティスと共にレティシアに避難することにした。
封印がもはや不可能ならば、残る手段は暗黒神を倒すことだけ。しかしそれはかつての七賢者もなしえなかったこと。歴戦を潜り抜けたエイト達でも今のラプソーンに勝てる可能性はごくわずかだ。
『しかし特別な血を持つ貴方ならば、暗黒神にも打ち勝つことができるかもしれません。』
レティスはエイトをまっすぐ見てそう告げる。 ラプソーンを倒すにはまず、彼を守る強力な闇の結界を解除する必要がある。そのためにはかつての七賢者の協力が必要だ。
『暗黒神の復活を阻止せんと、七賢者も再びこの世界に現れたようです。』
すでにこの世のものではない七賢者は、ラプソーンに直接対峙することはできない。それでも彼らの意志が結晶となったオーブは、きっとエイト達の力になってくれるはずだ。
『この世界に散らばった7つのオーブを集めてください。私もまた探すものがありますのでこの場を離れます。』
オーブを集めるとき役立つはずだとエイトにヤマビコの笛を託すと、レティスは空高く飛んで行った。
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