Patriot 58
ラプソーンが復活したからと言って、まだ世界が滅んだわけではない。一行は空に浮かぶ城に乗り込んだ。 つい先日まで封印されていた空中都市は、暗黒魔城という言葉が似合いそうな造りをしていた。地中に埋まっていた城は流石に劣化が進み、崩れた廊下も多く、迂回しながら奥へと進む。それでいて、さっきまで誰か人が住んでいた気配を感じるのだから不気味だ。
「ヨシュアは城に戻らなくてもいいわけ?」 「教会の騒動に件にラプソーンが絡んでいたというなら、私も最後までお供しますとも。それに報告は伝書でもできますし。」
淡々と返すヨシュアに、ゼシカはいつの間にそんなことしていたのだと、内心ツッコミをいれる。最初に会ったときは好青年と感じていたが、今ではククールとは違ったうさん臭さも感じてしまう。味方だからまだよかったが、敵に回したら厄介そうな人間だ。もちろんゼシカも今更彼が悪人ではないかと疑っているわけではない。
「兄貴、姉貴、何か重要なことが分かりやしたか。」 「錬金に役立ちそうな本もいくつかあったけど……。」
一方、城の図書室にラプソーン打倒に役立つ情報がないかと、本棚を漁っていた2人にヤンガスが声かける。エイトは強力な防具や武器を作るのに、役立ちそうなレシピを見つけたが、錬金窯はトロデ王達と共に地上にある。今ここではあまり役立ちそうにない。
「……姉さん?」 「ごめんなさい、ちょっと集中しすぎたみたいね。」
隣で食い入るように本を読むハイネに、エイトが声をかけると、はっとした様子で振り返る。 彼女が手にしていたのは、この城でラプソーンに仕えていた者の日記のようだった。そこにはかつて闇の世界と光の世界は一つであり、ラプソーンは再びその姿に戻そうとしていたことが記されている。過去の大戦では人間と神鳥など敵ではないと侮っていたようだが、そんな彼らにも警戒する存在がいたらしい。
「竜の一族、ねえ。まさかラプソーンに決戦を挑む前にそいつらに協力を仰ごうっていうのかい?」 「しないわよ。彼らを探しに行くほどの時間的余裕はないわ。」
肩をすくめるハイネに、ゲルダは分かってるならいいと手をあげた。
道中落ちている賢者の石やオリハルコンをゲルダがちゃっかり回収しつつ、たどり着いた深層部は、上層部と打って変わって平穏な町を写し取ったような姿をしていた。
「これは拍子抜けするほど、怪しいところがない場所でげすねえ。」 「むしろそれがおかしいんだろうが。それに空気がヒリヒリしている。」
気に敏感なククールがのんきなヤンガスを小突く。人はおろか魔物の姿がないはずなのに、まとわりつくような視線を感じる。
「ククールの言う通りだ。ラプソーンは僕達を歓迎しているみたいだけどね。」
先ほど降りてきた階段の方に振り返ったエイトもククールに同意する。そこには本来この城とは無縁であるエイト達の像が立ち並んでいた。
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