Patriot 52

 神鳥の協力により空が飛べるようになったエイト達は光の世界に戻ってきたものの、肝心のレオパルドが何処にいるのか分からないのが現状だ。
 おそらく最後の賢者の末裔だろう法王が住まうサッヴェラ大聖堂を訪ねてみたが、大きいな黒い犬を見たという情報はなかった。未だヌーク草が効いているのか、レオパルドはまだここに辿りついていないみたいだ。ここで待ち換えるのも手だが、聖堂騎士でもないエイト達は法王の傍にいられるわけではない。ならばレオパルドが弱っているうちに追い詰める方がいいだろう。
 どこかに潜伏しているだろうレオパルドを見つけ出すため、エイト達は神鳥の力を借りてしらみつぶしに探すこととなった。
 そうしてたどり着いたのが、鬱蒼とした森に包まれた三画谷だった。船でも徒歩でもたどり着くのが困難なこの場所は、魔物とエルフと人が共存する不思議な村だった。教会を訪ねると悪魔が神父をしているのだから驚くほかない。

「王、一人で先に行かないでください!」
「お前らが遅いんじゃい!」

 そんな村ならばトロデ王も見た目を気にする必要もなく、大はしゃぎで酒場に入る。人目を気にせず過ごせる集落はパルミド依頼なのだから無理もないだろう。全身で喜びを表現するトロデ王を追いかけるエイトの後に、ハイネ達も酒場に入る。
 酒場のオーナーによると三つの種族が分け隔てなく過ごせているのは、七賢者の一人クーパスのおかげらしい。彼は旅のさなか、傷ついたエルフとギカンデスを下心なく助けたのだという。それにひどく感謝したエルフとギカンデスはクーパスと供に旅をするようになる。しかし人の寿命はエルフや魔物と比べれば短いものだ。残されたエルフとギカンデスは彼の意思を後世に残そうとこの集落を作ったのだ。
 そのクーパスの意思とは、暗黒神ラプソーンの恐怖を人々の記憶から消さないことである。

「ラプソーンだって?」

 適当に聞き流していたククールも、まさかここでラプソーンの名前が出ると思わず顔をあげる。

「おや、貴方達もラプソーンを知っておられるのですか。」
「奴とはちょっと縁があってね。」
「ふむ……、なるほど。」

 オーナーはククール達の真意を探るように見る。こんな辺境でもここ最近の世界の情勢は感じ取っているらしく、ラプソーンを復活を目論む人間ではないかと警戒しているようだ。
 しかし何か納得したのか、オーナーは一つ頷いた。

「ラプソーンについてもっと詳しく知りたいなら、ラジュ様にお会いするといいでしょう。」

 七賢者に救われたエルフとギガンデスは村の最奥にある遺跡にいるらしい。




 三画谷はチェルスの故郷でもあった。彼は自分の素性を教えられる前にこの村を旅立ち、リブルアーチで命を絶ったのだ。

「そうですか。貴方達はチェルスの最期を看取ったのですね……。」

 エルフのラジュはエイト達からチェルスの気配を感じ取り、悲し気に笑う。彼女もチェルスが亡くなったことはすでに感じ取っていたようだ。

「知っての通り、暗黒神ラプソーンの復活の時は近づいています。」

 かつて七賢者はラプソーンを精神と肉体の二つに分かち、それぞれ別のものに封じた。魂は杖に、肉体は大岩に。大岩は容易に人が触れぬよう、彫刻家でもあったシャマルによって一つの像に姿を変えたのだという。

「七賢者の血が絶えぬ限り、肉体と精神が再び出会うことはありません。」

 しかしクーパスをはじめ、多くの賢者の血が既に潰えてしまった。最後の賢者が殺されたその時が、世界が闇に飲まれる瞬間である。

「封印に使われた杖を再び結界に閉じ込めれば、暗黒神の復活は阻止できるはずです。そのためならば私達もいくらでも協力いたします。」

 ラジュから譲られたのは暗黒大樹の葉だった。

三色交わる村
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