Patriot 31
鏡のことは一旦ヨシュアに任せることになった一行だが、宿で休むにはまだ早い時間だ。たまには気分転換も必要だろうとそれぞれと別行動をすることになったが、何故かエイトとハイネは共にあった。
「ヨシュアさんと随分仲がいいんだね。」 「仲がいいというより、彼の人柄的に話しやすいだけよ。」
いつぞやと同じ目を向けるエイトにハイネは困ったような笑みをうかべた。 エイトも彼女が言いたいことは理解している。ヨシュアに周囲の視線を集めるような華やかさはないものの、誰に対しても礼儀正しい話し方や柔和な態度は、恋愛感情の有無関係なしに人を惹きつけるものがあった。
「それにヨシュアさんってどこか貴方に似ているでしょう。だから余計に話しやすくって。」
どこか照れた様子のハイネにそう言われればエイトも何も言えなくなる。それはずるいだろうと彼は大きなため息をついた。
「……最近ククールと二人で回復呪文の練習してるよね。」 「それは……。」
唐突な話の切り替えにハイネは動揺する。合間を縫ってしているとはいえ、一緒に旅をしているのだから隠しきれるとは思っていなかった。だがこのタイミングで指摘されるのは不穏なものを感じてしまう。
「トロデーン城のときといい、そんなに僕って頼りない?」 「……まさか。旅に出てから、貴方をそんな風に思ったことは一度もないわよ。」
それこそハイネはエイトになら姫を託してもいいと思っている。彼女が彼を守らんとするのは、父が亡くなって唯一の家族だからだ。例えエイトが何者であろうとこの想いは変わらない。 そう語る彼女にエイトは、やはりこの人に自分の言いたいことは伝わっていないのだと痛感する。
「ならククールでもヨシュアさんでもなくて、一番に僕を頼ってよ。」 「ふふ。」 「なんでそこで笑うのさ。」 「だってあなたがそんなこと言うなんて。これではどっちが過保護なのやら。」
愉快そうに笑うハイネにエイトは脱力する。というより過保護の自覚はやはりあったのか。
「言われなくてもずっと昔から、私は貴方を頼りにしてるわ。」
そう微笑む姿は今までにも見たことがあるはずなのに、エイトの視線は外せなくなってしまった。
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