Patriot 28

 図書館には確かに古代船について綴られた本があったが、かつてあの砂丘が海であったということが分かっただけだった。水がなければ動かせないことに変わりはない。
 道中見つけた魔法の鍵片手に戻ってきたハイネに結果を報告していると、雲に隠された丸い月が顔を覗かせた。月明りに照らされた窓枠が、エイト達にとって見覚えるのある光景を作り出したのである。

「月影の窓が二度も人の子に開かれるとは珍しい。」

 イシュマウリも異なる世界の住人のとの再会に驚いたようだが、彼らの願いに快く聞いてくれた。
 しかし音を奏でてていた彼の竪琴の糸がぷつりと切れてしまう。どうやら現在彼が使っている竪琴の力に対し、願いが大きすぎるらしい。

「どうやら君たちが出会った誰かが月影のハープを持っているようだ。どうかそれを私の元に持ってきてくれないだろうか。」

 そう簡単に言うが、持ち主が見つかったところで国宝相当であろう竪琴を貸してもらえるのだろうか。





 月影のハープはアスカンタ王家に代々受け継がれる宝の一つであった。それにも関わらずパヴァンは恩人であるエイト達に譲ると言ってくれたが、ここでまた問題が起きてしまう。なんと地下に封じられた宝物庫は盗賊に荒らされていたのだ。パヴァン王はすぐに兵を招集するが、エイト達も黙って待っていられない。一足っ先に盗人の足取りを追った。
 どうやら宝物庫を漁ったのはモグラたちのうで、彼らの巣穴ともいえるアジトの奥からはいびつな音楽が聞こえてくる。

「に、人間か!?た、助けてくれ!このままだとオレたちが死んじまう!」

 なんでもモグラたちのボスがハープを盗んでから連日地獄の演奏会をしているらしく、部下としてはたまったもんじゃないそうだ。お願いだからハープを奪い返してほしいなど、盗人本人に言われる日がこようとは思いもしなかった。

「こりゃ、うっかり壊されてなきゃいいんだがな。」

 ククールの一言に洒落にならないとエイト達は不協和音の発生源へと急いだ。

月影のハープ
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