Patriot 閑話
エイトがトロデ王の兵士だとククール達も聞いていたが、近衛兵だと知ったときは目を丸くした。確かにそこらの兵士より腕が立つが、実力だけではたどり着けない地位である。
「しかも父親は近衛隊長なんて、とんでもないエリートじゃないか。」
彼の育て親であるジョセフは元平民出身の志願兵だったというのだし、バスカヴィル家の経歴にククールは驚くばかりである。 どうやらトロデーン、というよりトロデ王は身分や出自にこだわらない人間らしい。そういう意味ではできた君主だろう。
「ということはハイネも近衛兵なの?」 「私は特務隊よ。」
ゼシカの疑問にハイネは首を横に振る。 近衛隊は兵士のなかでも実力者揃いであり、主君を守るのが仕事だ。しかしトラブルはいつも王の周りで起こるわけではない。城外でも一般兵では対応しきれない問題がおきることがある。その時真っ先に動くのがハイネが属する特務隊だ。 普段は近衛隊の補助をしているが使者として他国に赴くことも多く、外交においても重要な存在だ。
「私はエイトより城の外に出ることが多かったの。丁度城がドルマゲスに襲われたときも、サザンビークから帰ってくる途中だったわ。」 「それで姉貴は呪われずに済んだってことげすかい。」 「ヤンガスの言う通りよ。……そのせいで城を守ることができなったと思うと、やっぱり複雑ね。」
もっとも彼女が城にいたからといって、事態が好転していたとは思えない。ドルマゲスの凶行は短時間に行われたものであり、城に残っていた特務隊も対応できなかったのだ。
「過ぎたことを考えても仕方あるまい。それに偶然とはいえ無事だったからこそ、こうしてわしらと共にドルマゲスめを追いかけられるんじゃぞ。」
ならば落ち込むだけ無駄だと、顔をうつむけるハイネをトロデ王は励ました。
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