Patriot 12

 今回の海魔退治を切っ掛けにエイト達とゼシカは共に行動することになった。仲間は多い方が頼もしい。
 そして船は再び南の大陸へ向かって出発することとなる。魔物は相変わらずいるけれど、わざわざ船を襲ってくるものはいない。

「姉さん、これ。」
「あら、私が身につけていいの?」

 エイトがハイネに渡したのは先ほどオセアーノンから貰った金のブレスレットだった。海底に沈んでいたというが状態はよく、太陽の光にかざすと控えめに輝く。そういえば金は錆びにくいとハイネも聞いたことがある。

「姉さんにはいつもお世話になってるから。」
「ふふ、姉思いの弟を持てて嬉しいわ。」

 ありがとうと伸ばされたハイネの手をエイトが掴む。一瞬きょとんとした彼女だったが、くすくすと再び笑う。

「頭を撫でられるのは嫌だった?」
「当たり前だよ、もう子供じゃないんだから。そもそも姉さんと僕じゃ年も一つしか変わらないし。」

 流石に恥ずかしいとエイトは顔を赤くしている。そういうところが可愛くて、ハイネは時折先ほどのように振る舞いたくなるのだ。

「ふふ、それなら私から一本取れるようになりなさい。」

 潮風に髪をなびかせながら船室に戻っていくハイネの後姿にエイトにため息をこぼした。城にいたころからエイトはハイネに勝てたためしがない。
 そもそも鉄壁の守りの姉にタイマン勝負で一本とれる人の方が珍しいのだ。






 その様子をゼシカは少し離れたところで見ていた。姉弟というわりに似てない二人は髪色も瞳の色も異なり、おそらく血のつながりはないのだろう。それでも実の兄弟と同じぐらい親しげな姿に、兄と一緒にいたころを思い出す。兄もゼシカが成長しても時々頭を撫でようとしていた。
 だけどその兄ともこの色鮮やかな海を見ることは二度とないのだ。そう思うとあの塔で流しきった涙が再びこみあげてきそうになる。ああ、駄目だ。

「兄さん、待ってて。」

 自分は仇を取るために家を飛び出したのだから、これ以上弱音をあげるわけにはいかない。

船旅うらら
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