ひまわり 01

※君島とキラ仲の設定が混ざってます

 それまでレイナは惰性で生きてきた。周りもそうだからと高くも低くもないレベルの学校に進学し、卒業後は知り合いの紹介で就職。普通を維持するにはそれなりの努力はしてきたが、無我夢中という言葉とは無縁であった。楽な人生を選んできたのだと言われても否定はできない。彼女自身そんな生き方に疑問を抱いていたのだから。
 そんなさなか一枚の広告が彼女の目に留まった。なんでも無人島開拓に伴う移民者と募集しているらしい。それを見た瞬間彼女はこれだと確信し、周囲の反対も押し切って新天地へ飛び込んだ。
 別にレイナに新天地で何か具体的にやりたいことがあったわけではない。むしろそれを探しにやってきたようなものである。最初は小さな農園で自給自足するのもいいかもしれないとお気楽に考えていたぐらいだ。
 当然そんな生半可な覚悟のせいで地獄を見るはめとなるのだが。畑に種をまいたところで一日で作物ができるはずもなく、なけなしの資金は新居と畑の開拓でほとんど消えてしまった。無人島だったこの島はまだ物流が弱く、お金が多少あったところで店は少なく物価は高い。家出同然に飛び出した手前家族や知人に頼るのもはばかられた。
 とにかく何か金になりそうなものを早急に育てる必要があると、彼女が目を付けたのが花だった。商品となるものが育つまで雑草でもなんでも食べて食いつなぐしかあるまい。
 そんなサバイバル生活にも心折れずにすんだのはマルクという青年のおかげでもあった。同世代の彼もまた移民船に乗ってやってきた島の住人であり、この島最初の牧場主である。二人の話が合うのも当然だった。
 ようやくぼちぼちとそれぞれの畑に作物ができても、二人が雑草を食べる日々は終わらない。せっかく出来たものを食べつくしては出荷する分がなくなり、次の種やら生活用品を買う資金がなくなるからだ。

「ねえ、マルク君。少しおもったんだけど……。」
「どうしたの?」

 多くとれたからとハートの葉っぱをマルクから少し分けてもらったときだった。いつもより神妙な顔をしているレイナに彼はおそるおそる続きを促す。

「このハートの葉っぱって食べたら元気になるよね。」
「うん、おかげで仕事もできるから助かるよ。」

 まだ収入が安定しない二人にとってまさに救世主のような存在だ。それでも何か言いたげなレイナにマルクは首をかしげる。

「本当に食べても大丈夫なのかな?副作用とか依存症とかが怖くなってきたんだけど。」
「……。」

 二人の間に微妙な空気が流れる。

「深いことは考えない方がいいと思うよ、レイナさん。」
「そ、そうだね!」

 明日の暮らしより今日の暮らし。牧場・農場暮らしは精神的タフさも試される。

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