我慢できない 番外編 01.



*こちらは短編小説の「我慢できない」の番外編です。是非本編からどうぞ*



俺の恋人は正直、マゾヒストの気があると思う。かくいう俺に別段サディストの性癖がある訳でもないのだが、大輔は少々言葉攻めに弱いところがある。
先日大輔とテレフォンセックスをした際も、俺が直接的な言葉を羅列する度に反応していたようだからな。全く、可愛い奴だ。



我慢できない 番外編



「今日は久しぶりのデートだから俺気合い入れてきたんですけど!?」
「奇遇だな、俺もだ」

最近勉強ばかりにかまけてろくに大輔の相手をしていなかった為、今週末に何処か出掛けようと俺からデートに誘ったとある土曜日の午後のことだった。
待ち合わせ場所である駅前の噴水に佇んでいた大輔は、やたらめったらしないような正装…と呼んでやるべきか、いつも着ているようなラフな格好ではなく、恐らく今日の為にこさえたのであろう一張羅を羽織っていた。灰色のスーツ調の服装がよく似合っている。

「じゃあ何でラブホ?!」
「俺達、ラブホテルには赴いた事が無いだろう?何事も経験が大事なのだから、今日俺達が此処に来るのは必然だ」

今日のデートプランは全て俺に任しておけと前々から伝えていたので、電車に乗り十以上離れた駅に降り立った俺達が一体何処へ向かうのかと大輔は目を輝かせながら俺の後を着いて来ていた。
俺が小洒落たラブホテルの前で足を止めれば、予想外だったらしい行き先に些か大輔の苦言が飛ぶ。

「そ〜かも知んないけどさ〜…まさか休みの真っ昼間からこんなとこ行くなんて想像もつかなかったっつか、」
「馬鹿め、このラブホテルは男性同士でも入れる代わり人気のホテルなのだ。カップルがひしめき合う夜に行ったのでは満室で入れない可能性があるだろう」

予約も出来ないのだから、と最後に付け足せばやっと納得したらしい大輔がそわそわしながら俺の後ろに隠れるようにくっついてくる。

自動ドアの向こうには人っ子一人居ない未知の空間が広がっており、壁一面に光るモニターには部屋の内装の写真と値段が書いてある。最上級の部屋を選択し、機械から落ちてきたルームキーを手にエレベーターへと進んだ。

「響、お前手際よすぎ」
「はっ、当然だろう」

お前の為に調べたのだからな、とは口が裂けても言わないが、まぁ…察しろ。



* * *



「は、え、何ですかコレは」
「見れば分かるだろう、ネクタイと手錠だ」

いやいやそれは分かるんだけどと後退る大輔をそのままベッドに押し倒す形で追い込む。
男子高校生二人を乗せ、ばふんとキングサイズのベッドが沈み悲鳴をあげた。

「何する気だよ」
「分からないフリか?大輔」

意味深に笑ってみせれば大輔は明らかに戸惑い、困惑の表情を浮かべた。大方俺に変な事をされると思って冷や汗でもかいているのだろう。だらしなく開けた口から渇いた笑いが響いている。
俺は手に持っていた手錠を光の速さで大輔の両手にはめ、カチャリと鍵をかけた。

「ぅわ!ちょ、とれねぇ!」
「当たり前だろう、今鍵をかけたのを見なかったのかお前は」

細い鍵の片割れを翳して見せ付けるようにポケットへそれを忍ばせる。
拘束された大輔の骨張った両手から諦めたようにすっと力が抜けたのが分かった。

「やっと大人しくなったな、いい子だ」
「…うっせ」

拗ねるような声色で俯く大輔の顎を引いて斜めからキスを落とす。薄く開かれた唇に舌を捩込んでちろちろと舌同士を絡ませれば、跳ねたように大輔が俺の腕を掴む。

「ン……はぁっ」

そのままなし崩しに大輔の口内を侵し、器用に服を脱がせてやる。もうしっかり質量を増し始めている下半身はボクサーパンツから今にもはみ出そうになっていて、思わずゴクリと生唾を飲んだ。

「ふっ…もうこんなにして…大輔、口ではあぁ言っていたがやはりカラダは正直だな」
「うっ…さいよ…」
「ほらまた大きくなった」
「〜ッ」

恥ずかしそうに口をキュッと閉じて目を逸らす大輔があまりに可愛くてその真っ赤に染まった頬を撫でてやれば、すべらかで触り心地の良いその感触に心が穏やかになっていく。

「ふっ…」
「な、何笑ってんだよ」

無意識に緩んでいたらしい表情を元に戻してから、こちらを警戒するように見上げる大輔の前にネクタイをちらつかせた。

「それ、どうすんだよ?」
「こうするんだ」

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