─ep.監獄の外





「どうしたのです?ベルベット」

どうにか脱出した監獄塔を振り返ったまま暫し動かないベルベットを怪訝に思い、シアリーズは声を掛けた。
監獄から脱したとはいえ、島を出るためには一刻を争う事態だ。それが分かっていない筈があるまい。ましてその背が感傷に浸っているように見えたなどと。

「別に。行くわよ」

振り切るように監獄に背を向け、ベルベットは身一つで歩き出す。だがベルベットにとってはその身と復讐心さえあれば十分だった。
食らった命が、魂が、ベルベットの血肉と意志の一部となる。罪さえ共に食らいベルベットの存在を鮮烈にしてゆく。それは血肉が入れ替わる三ヵ月を過ぎても消えない永劫の証明。
食らった命と、罪をも背負って生きてゆく。





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