09





何のメカかよくわからないが取り合えず人を撃ち殺すようなものを二丁ほど構えてコムイは呟いた。


「どういう事なの…」

「取り合えずお前がどういう事だよ。」


ナマエを抱え爆発があった家の裏側に行けば頭をぢりぢりに爆発させ、顔をナマエ以上に真っ黒にしたコムイがいて、ナマエを離さないとばかりに抱っこしている神田を見るとコムイはシュウシュウと煙を出す(多分爆発源の)ゴツいメカを手に取っていた。


「相変わらずぶっ飛んでるな、コムイ。」

「神田君…?王子のキミがどうしてここに…。で、どうでもいいけどなんで僕のナマエを抱っこしてんのキミ。」


ジャキッと(何ともデザインが悪い)銃のようなものを構え直したコムイの脇にアレンとラビが入ってくる。


「ストップ。お久しぶりです、コムイさん。」

「そんな物騒なもの出すなさコムイ〜。」

「え?え?アレン君?ラビ?」


コムイの腕を二人が取って銃(のようなもの)が地面に落ちる。取り合えず兄が人を殺めるようなものを落としてナマエは安堵し、何やら知り合いのような兄と神田達を見て状況確認を求めた。


「えっと…」

「何だ、聞いてないのか。」


腕の中で戸惑った様子を見せたナマエに神田が言う。


「コムイは元々俺の御付きだ。」

「えっ…!?」


と声を上げたのはナマエとリナリーだった。確かに自分の父は城勤めだとは聞いていたが、兄が王子の御付きとは初めて聞いた。父に連れて行かれ出仕している姿を何度か見ていたがその先が王の後を継ぐ王子の下だったとは。


「二年前にぱったり姿見せなくなったと思えば…。死んだってな…。」


そう神田が言えばコムイは苦笑した。ナマエとリナリーも少し黙ったが悲しくはない。もう、三人でその悲しみは拭った。少し流れた沈黙にラビとアレンが明るく声を上げた。


「ま、王子の優秀な御付きがぱったりと来なくなったせいで、」

「こんな年若い僕達があのバカ王子に付くようになっちゃったんです。」

「てめこの白髪いつか殺す。」

「白髪言うなパッツン。」


ばちばちと火花を散らす神田とアレンに「相変わらずだなーもー」とコムイは笑って、隣のラビに話を振る。あの二人はしばらく無理だ。昔から相性が悪い。


「で、王子様が直々どうしたの。」

「どっかのお兄様が出し惜しみしてたお姫様をもらいに来たんさ。」

「パーティーにはあまり行かせないようにしてたんだけどな。」

「けど社交界では有名だったみたいさ。双子のリー美姫は。」


アレンが言ってたさ、とラビがへらりと笑ってコムイも笑う。


「相変わらずあの人にパーティー引きずり回されてるんだね。」

「アレンの部屋は請求書だらけさ。これじゃ誰の御付きをしてるんだか…。」


何やら打ち解けた雰囲気になっている。しかしそんな雰囲気に付いていけてないのは双子だった。二人は顔を見合わせて首を傾げる。一体何が何やら。とにかく、皆は知り合いで兄は王子の御付きをしていてアレンの部屋は請求書だらけで。


「コムイ、城に戻ってくるさ。」

「え?何言ってんの?僕達没落しちゃった貴族だけど。」

「先の流行り病で優秀な臣下が次々と亡くなってしまったんです。」


コムイの言葉にいつの間にか睨み終えたアレンが入ってきた。


「コムイさんが城に戻ってきたら大助かりなんですよ。それに、お妃様のご家族が城からこんな遠いところに住んでたらお妃様が悲しみます。」

「え?誰が誰のお妃様だってアレン君。聞こえるように言ってくれる?」

「言っていいんですか?」

「やっぱり言わないで!!」


耳を塞いでその場に蹲ったコムイに神田が小さく溜め息を吐いて、ナマエが小さく笑った。「言ってくれと言ったのはコムイさんです」と蹲るコムイを逃がさないとばかりにアレンが黒く笑って、ラビとリナリーは苦笑した。

森奥深くのあばら家に、笑い声が溢れた。


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