04
おまけ
ある男子生徒A君の語り。
***
先生の左手にキラリと輝くものが見えて、ある女子が発狂に近い甲高い声を上げた。
「ぎゃっ!先生が指輪してるっ!」
「えっ、まじだ!ちょっと先生どういうこと!?」
「彼女!?彼女なの!?」
一人の女子生徒が騒ぐと芋づる式のようにずるずると他の女子も先生に群がり先生は一瞬すごく面倒臭そうに顔を歪めた(そりゃもう教師がするような顔じゃなかった)。先生は終わった授業の教科書とかプリントとか出席簿を教卓の上でトンと整えて、さして照れるわけでもなくサラッとこう言った。
「誕生日の記念にな。」
特に弁解もせずに言った、ということは「彼女は、いる」ということで、その時の女子達の顔はプリクラでやる変顔以上の異常な変顔レベルだった。(はっきりと言ったわけではないけど、)彼女持ちということが発覚した先生。だけど女子の質問攻めはそれで終わらない。
「ゆ、ゆゆ指輪をっ!?ペアリング!?」
「そ、その彼女から!?」
「違う。指輪は俺が買った。あいつからは…」
「あ、あいつ…!?」
あえての名前を呼ばずにあいつ呼ばわり。仲の良さが聞いて取れる。その時、先生が指輪に視線を落として、少しだけ目を優しくしたのを俺は見逃さなかった。
「サインもらった。」
「は…?サイン?何かの契約?」
そう言って首を傾げた女子に先生は笑った。そう、いつも通りの口端を上げて意地悪そうにやるあの顔。だけど、なんかその時の先生はいつもと違った。確かにいつもと変わらずすっげー意地悪そうな顔だったんだけど、その時の先生は意地悪と一緒に、どこかとても幸せそうな顔をしてたんだ。
「あぁ。」
「婚姻届け、にな。」
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