07



ご主人様に耳をはむっとされて体をびくーんっと跳ねさせるとご主人様は口端を上げて笑ってた。意地悪そうな顔だけど、…知ってる。ご主人様、この顔は心の底から楽しんでる顔。表情の変化があまりないご主人様の、唯一の、楽しそうな顔の一つ。それに尻尾を大きくゆっくり振ると後ろからリナリーさん達の声が聞こえた。


「ラビ、その写メ送ってね。絶対だよ!」

「はいっ、僕も欲しいですっ」

「まかせるさ。一斉送信、と。」


また増えてる紙袋を脇にラビさんの携帯を覗き込むリナリーさん。(多分リナリーさんの)買い物袋を持ったアレンさんはリナリーさんの言葉に続くように手を上げて、ラビさんは携帯を弄りながらこっちに来た。そんな皆さんにご主人様が片手を腰にあてて眉を寄せた。


「…何してんだよお前等。」


溜め息混じりに言ったご主人様にラビさんがぱちんとウィンクをして、ぶいっとピースをした。


「まあまあ、ユウの携帯にも送ったから見てみるさ。」


そう言われてご主人様は携帯を取り出す。…なんだろう。ご主人様と一緒に首を傾げれば、ご主人様が私にも見やすいように携帯を開いてくれて、あ、ありがとうございます、私はご主人様と一緒に届いたメールを見た。受信箱、ラビ、さん、添付ファイル…。ぽちっと携帯のボタンの音がして添付ファイルの写メが開かれて、私はびっくりした!!こ、これは…!!


「タイトル!猫とにゃんにゃんしてるナマエ!」


そこには、さっきウィンドウ越しに見てた仔猫と、それを尻尾であやしてた私が、写ってました…!い、いつの間に!?う、後ろにラビさんいたの!?気付かなかったですご主人様!!というよりも、ご主人様の携帯に私の写メが…!ごめんなさいご主人様っ!とご主人様を見上げればご主人様はその写メをしばらく黙って見詰めた後。

ぽちぽち、ぽち、ほ、ぞ、ん。

ほっ…!ごしゅ、ご主人様それは保存ボタンですっ!ご主人様のフォルダに私の写メが…!


「仕事したな、クソ兎。」

「何その俺いつも仕事してないみたいな。」

「基本してませんよね。」

「してないよね。」


お前等ーっ!とラビさんが声を上げました。あの、私の写メ、もしかして、皆さんに一斉送信されたのですか。(…なんてことだ。)




勝手に迷子になってしまった事、たくさん謝ったら(と言っても喋れないからたくさん頭を下げた。)リナリーさんが「すぐに見つけてあげられなくてごめんね」と、ラビさんが「ユウの手しっかり握っとくさ」と、アレンさんが「お腹すいてませんか?」と頭を撫でてくれて(おこ、られなかった…。)、私達はご飯を食べる事になった。アレンさんのお腹は、アレンさん曰く「限界を超えそう」らしく、一番近くにあったレストランでご飯を食べる事になった。


「ナマエは何食べる?」


一番最初にメニューを見せられて、戸惑う。あの、私、後で大丈夫です…それに、無ければ無しでもいいので、と首を振れば「だーめ!」とメニューを渡された。ご主人様…わたし、とご主人様を見上げてもご主人様は「好きなもん食え」しか言ってくれなかった。
まただ。
またこの人達は、私を獣人扱い、しない。


「ナマエ、苺ホットケーキあるさ。」

「苺パフェもありますよ。」

「ナマエ苺好きなの?」


向かいにラビさん、アレンさん、リナリーさんが座って、反対側にご主人様と私が座って、それにも私は戸惑う。だって、獣人は獣人用の席が用意されているのに。同席して、いいのかな。

獣人が同席、

獣人が、

人間と、

同席。

そう目で訴える周りの視線が少し居心地が悪い。(こういう時、獣人の耳は嫌だ。聞こえて、きてしまう。いやな、声。拾ってしまう。)その視線から逃げたくて、堪らなくて目をぎゅっと瞑った。瞑って下を俯く事で我慢した。

ごめんなさい。ごめんなさい。同席して、ごめんなさい。ごめんなさい。

そう拳を作って俯いてると、その拳に、大きな手が乗った。
…あたたかい。大きな手。
私の、大好きな手。
この手は。


「ナマエ、早く決めろ。」


テーブルに肘をついて、その手に顎を乗せて隣のご主人様は言った。いつものように、何でもないように。
でも、机の下で私の手を、優しく、撫でてくれた。さっきみたいに、手を繋ぐように、指と指の間に指と指を絡ませて、撫でてくれた。

なんでだろう。不思議。さっきから心臓のどきどきが止まらないですご主人様。それに、悲しくもないのに、さっきから何だかとても泣きじゃくりたいのです。不思議です。許されるなら、ご主人様に抱き付いて、泣きたいのです。そしてびっくりです。周りの視線が、あまり気にならなくなってきました。

不思議、です。そうご主人様をぱちぱち見詰めていたら、もう一度ご主人様に「早く決めろ」と言われて私は慌ててメニューを持ち直した。(不思議です、ご主人様と、皆さんと一緒にいると、わたしが獣人獣人と気にしている事が、おかしいみたい。)

あのっ、えと、あの、わたし、




「お待たせしました、お伺いします。」

「Aセットと、焼肉プレート、その焼肉プレート大盛り。それと、…え?蕎麦?ないに決まってるでしょ。もう神田はBセットでいいわよ。…え?C?あぁ、もう。ごめんなさい。Cセットを。あと、苺ホットーケーキください。」





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