ピカッと部屋が一瞬すごく明るくなって、下から這い上がってくるような、低い大きな音が身体中に響く。ごろごろっ!あ、や、やだっ。ごろごろっ、怖い。雷、怖い、よ。ごろごろっ!雷は鳴る。光る。鳴る。怖い。どんなに身を縮めても雷は私を照らす。どんなに逃げようとも雷の音は私の耳に鳴り響く。怖い、怖いよ。ごしゅ、ごしゅじんさまは、お仕事で、わたし、ちゃんとお留守番しなきゃいけないのに、雷、怖くて、鳴り止まなくて、お留守番どころじゃなくて、ごろごろっ!あ、ごしゅ、ごしゅ、ごしゅじんさま、はやくかえってきてくだっ、さいっ!

ピカッ

ごろごろっ!


ごしゅじん、さまっ
思わずご主人様からもらった毛布に顔を埋めた。ご、ご主人様〜っ。毛布からご主人様の匂いがして、優しいご主人様を頭に思い描くようにすんすん鼻を鳴らして嗅いだ。はやく帰ってきてくださいご主人様。ご主人様の匂いに、まるでご主人様がそばにいるような感じがしてきて、少しだけ安心した。ちょっと顔をずらして緊張の息を吐いた。


ピカッ

ごろごろっ


ご、ご主人様〜っ!ちょうど顔を毛布から浮かした瞬間に雷が光って唸って、あ、もう怖くて堪えられなくて、私はご主人様の毛布を頭から被った。こわい、こわいよ、雷こわいよ。すごい光るし、音大きいし、いつも突然なるし、し、しかも私知ってます、雷、火事とか停電とか思いのままだと聞きました。怖いやつだって、誰かから聞きました。え、えっと、確かカラスだったかな、カラスの獣人だったかな、


ピカッ

ごろごろっ!


ああもう誰でもいいです雷怖いですすごく怖いですとても怖いです誰か止めてくださいっ
ピカッと光った空にまた鳴るっ!と私はそれから逃げるようにリビングを出た。それから、あ、ど、どこに逃げよう。ト、トイレ?お部屋?お風呂?ごろごろっ!わぁあああもう何処でもいいよ!雷が聞こえなくて、でもちゃんとお留守番ができる、とこ、あ、あそ、あそこ、だ。私はずるずると体を引き摺って、玄関の隅に、身を縮めて、毛布を頭から被った。ごろごろ、聞こえない。雷の光りも、これで見えないもん。玄関に居ればちゃんとお留守番もできるし。これで大丈夫だもん。


ごろごろっ


大丈夫だもんっ!!
もう壁と一体化するかんじゃないかとばかりにぎゅうぎゅうと壁に体を押し付けてると、雷の音と一緒に足音が聞こえてきた、けど、ひっ、雷っ、とぎゅううう目を瞑ってると、毛布ごと、体が、浮いた。
え…。あ、あれ。

私の体はそのまま抱き上げられて、赤ちゃんを抱くように、抱かれて、潤んだ視界に、目の前に、ご主人様がいた。ご主人様は抱き上げた私を見上げて、優しく、笑ってた。


「留守番、よく頑張ったな。」


そしてそのままリビングに行かないで、部屋に、ご主人様の寝室に運ばれて、ベッドに下ろされた。ぽふん、と落ちた私の体はベッドで、ご、ご主人様のベッドだ!と慌てて下りようとしたけど、毛布がきつく巻き直されて、動けなくなってしまった。(きょ、今日は簀巻き?)そしてご主人様は私の頭を撫でて、落ちた涙を舌でぺろっと拭った。しょっぱいですよ、ご主人様。


「頑張った褒美にぬるいミルク持ってきてやるよ。」


だから、そこから離れたらハムにする。と言われて私はベッドの上で固まった。(ハ、ハム…!)




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