深夜の工場地帯の一角。 広い廃工場を囲んで、黒ずくめの男達がその時を待っている。
緊張感と殺気で満たされている空間に、ザザッ…と電子音が鳴り、全員が自分の無線へ耳を傾けた。
『亀尾はん、気分はいかが?』
『蕾、最高の気分だ。 明日がくれば、取引成立。やっとお前を抱くことができる。』
亀尾…、麻薬取り引きで指名手配中であり、今回の星だ。 蕾という女は、こいつの女である。
『ふふっ。 …例のモノは、C倉庫に?』
『あぁ、しっかり隠したさ。』
『でも…やっぱり心配やわぁ。 …もしものときは、ちゃんと守ってくれはります?』
『勿論。お前は何があっても守ってやる。』
2人の会話を聞き、土方がC倉庫に指示を出す。
…そして、
「御用改である!!!」
討ち入りが始まった。
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「くそっ…鼠がいたか!」
亀尾はんは、慌てた声で私を抱き寄せ、真選組達に刀を向ける。
私から見てもどちらが優先かは明らかで。 不安げに亀尾はんを見ると、私を抱く力が強まった。
背は壁。私達を囲む隊士。
味方はもう残ってはいない。
中央の一人がこちらに近づいてきて、刀を構えた。
覚悟を決めなければならない。
「その顔、嫌ェ。」
「な、なにがだ?!」
「お前じゃねェよ。
汚ェ厚化粧に、品もねェ着物、その喋り方も全部、癪にさわるんでィ。」
「何を言っ「この顔を亀尾はんは愛してくれはりました。」
「つ、蕾?」
「この顔を、この化粧を、この髪型を、この着物だって…
私の趣味でもないですけど、これがなきゃ作戦成功してないでしょーが!」
そう言うと、中央の男。 ーもとい、総悟さんの元へ駆ける。
思いっきり抱きつき、後ろを振り返ると、呆然とした亀尾と目が合った。
「亀尾はん。 私、強いお人が好きやの。」
擬態中によく見せた笑顔で、よく言っていた台詞を言うと 彼は、隊士の影で見えなくなった。
全て私の作戦 (悪ィ女。) (一ヶ月も芝居してて、ストレスMAXなんですよ!あー、早く顔取りたい。)
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