ごめんねの意味







スモークアイの討伐完了をウイズさんの元に戻って伝えると、今日は夕食をご馳走しようと言われお言葉に甘えようと言うことになる。

ウイズさんの手作り晩ご飯は凄く美味しくて、お腹が減っていた5人はペロリと平らげてしまった




食べ終わると各自自由な時間になり、一人でモービルキャビンを探索する。
キャビンの中はこう見えてとても広く簡易シャワー室もあればキッチンもあり5人が眠れるスペースもある…ブルーは魔法がなくてもこんなに豪勢なのはこの国の技術が素晴らしいからだなぁ、と関心してしまった


シャワーを浴びることとなり順番はじゃんけんになる。1番最後で良いと伝えたが気を使うなと言われたので参加すると2番目に勝ち、ノクトが1番だった為出るのを待った




「ブルー、レスタルムに着いたら洋服を買いに行こう」


『…私の?』


「ああ、今来ている服しか持っていないだろう」


『魔法で綺麗に出来るから大丈夫だよ?』


「珍しい格好だろう、目につくし…それに暑いんじゃないか?もう少し動きやすい服の方が怪我をしなくてすむかもしれない」


『あれば助かるけど…お金の面で迷惑かけるには…』


「…」


『…ハイ』




確かに外に出れる様な服はこれしかない、でも魔法で綺麗に出来るしなんとかなるだろうと思っていたけど案外この世界は暖かくローブを着ていると暑い…。
拡大呪文のかかっている巾着の中には部屋着が上下1枚だけ入っていたが、それは寝る時に着ようと思っていた。

お金をかけてまで用意して貰うのが申し訳なくて誤魔化そうとするがイグニスの無言の威圧に負けて返事をする。
遠慮はしなくていいと言っただろう、と頭を撫でられなんだかイグニスには妹扱いされている気がした




「…次、シャワーいいぞ」


『あ、はーい』


ノクトがモービルから顔を覗かせて言う、ブルーはやはりノクトとの間がギスギスしている様な気がしていたのだった。

先程のスモークアイの時の出来事が原因なら謝らなければならないなぁと思いつつキャビンのシャワー室へと入って行った



『次、プロンプトどーぞ』


「りょーかいっ」


『…あれグラディオ、イグニスとノクトは?』


「イグニスはウイズと話してる。ノクトはモービルの中でもう寝てると思うぞ」


どうやらイグニスはウイズさんと料理の話をしているらしい。ウイズさんは新しいレシピを、イグニスは味の秘訣やらとお互い情報交換をしているようだ。

ノクトは…まぁ寝る子は育つしシフトも結構疲れるみたいだからもう寝たんだろう、話が出来ればと思ったんだが…。モービルの扉を閉め、ベッドをそーっと覗くと彼は自分のスペースで横になっていた


『ノクト…寝た?』


ブルーは恐る恐るノクトに声をかけるが案の定返事は返って来ない、側に近寄り隣に横になるとノクトの寝顔をじーっと見つめる。よく彼の寝顔を眺めるが眠っている時の彼の顔は凄くあどけなくて…見ていてなんだか落ち着くのだ


『…怒らせたい訳じゃなかったんだけどな』


ぽつり、と独り言の様に呟く。ただ、皆を助けたかっただけ…今までもそうしてきた。それで物事が上手く進んでいたから、勝手に一人で倒しに行ったからきっとノクトは怒ったんだろうとブルーは考えた


『ごめんねノクト』


寝ている彼に向かって小さな声で呟く。眠っている彼に言っても仕方がないから明日起きている時に言おうと思って起き上がろうとした時だった


「許さないって言ったらどーすんだよ」


『おおっ!!?』


寝ているはずの彼から聞こえる声にどきりと心臓が跳ね上がる。変な声が出て恥ずかしいと思っているのと裏腹に、ゆっくりと横を向くと目を開いているノクトがいた


『…いつから起きてたの』


「俺に寝たか確認してる辺り」


『最初からじゃんか』


起きてたなら返事してくれればいいのに、とひとり心の中でごちる。彼に謝りに来た事を思い出すと向き直った


『ノクト、昼間はごめん。勝手に倒しに行って…』


「…べつに俺は」


『ノクトも倒したかったから怒ったんでしょ?』


「…は?」


『…え?』


あれ、とお互いに目が点になる。まさかの思い違いにブルーはどうしたらいいか分からなく目を泳がせた。
怒っている理由が違う、そう思った時ノクトがベッドからムクリと起き上がり大きなため息を吐いた


「…あのなぁ」


『…は、はい』


「俺が倒したかったからとかそんなんじゃなくて危ねーから1人で行くなって言ってんだよ」


『…危ないから?』


「そ」


『でもほら、上手く行くか分からなかったし…それに皆が怪我するより1人で行ったほうがいいかなってへぶっ』


「それに怒ってんだよ、俺は」




ノクトの眉間に皺が寄る。喋りを遮るかのようにノクトはブルーの頬を両手で挟んで黙らせる、突然の出来事に驚いたブルーは目をぱちくりとさせていた





「1人で行ったほうがいいとか自分が犠牲になればいいとか…そーゆーのやめろ」


『…ぇ』


「なんでか、分かるか」




ノクトの表情が暗くなって行くのが分かる。言葉では無くふるふると首を横に振り分からないと伝えると、ノクトはゆっくりと口を開いた




「心配すんだよ、そーゆーのされると」


『心配』


「もう戻って来ないような、そんな気がしちまうんだ」


『…うん』


「だからもうあれ、やるなよ」


『…ごめん』


「ん」




王都が陥落してしまった事、王様…ノクトのお父さんの事を思い出す。私にとってお父さんのような人は…ダンブルドア校長だった。大切な人が自分の目の前からいなくなる悲しみを、置いていかれる側の気持ちを知っている筈なのに申し訳ない事をしたな、と目線を下に落とす。
ノクトは頬を挟む手の力を緩ませ、片方の手の親指で私の頬をなぞる。なんだか普段のノクトとは違って見えてしまい少しドキッとしてしまう。ぼんやりと彼の顔を見つめていると突然頬にピリッとした痛みが走った


「これ、治さないのかよ」


『いっ…っ…わ、忘れてた』


「傷、残っちまうぞ」


『だ、大丈夫だって』


「女子は顔に傷なんて残したくねーだろ」


『女子…ふふっ』


「何笑ってんだよ」


『女子って言い方が可愛いなぁって思って』


「可愛いとか言われても嬉しくねーし」





ムスッ、としたノクトの顔をみてまた笑みが溢れてしまう。
先程まで暗かった空気が徐々に明るくなって行き緊張の糸が解れると段々と眠くなってきてしまった。
ふぁ、と欠伸を漏らすとノクトもつられて欠伸をしていた


「ふぁ…ねむ…」


『ん、寝よっか』


「…ん」


『…え、ちょ…ノクト』


「…なに」


『いや離して貰えればと…』


「ん、」


『おーい』


「あったけーから今日このままな」


『いやいやいやどゆこと』


ノクトがベッドに寝転ぶ際に腕を引かれ隣にダイブする。
寒い訳では無いだろうに何故か離してくれず身動きが取れないまま抱き枕にされてしまった。

まぁ、怒らせたお詫びに今日くらいは甘えてさせてあげよう、とノクトの胸板に顔を埋めるとそのまま瞳を閉じた















(えっ、なんか2人一緒に寝てるんですけど!)
(おーおーとうとう王子にも春がきたか)
(気持ちよさそうに寝ているから、そっとしておこう)
(えー!?いいのこのままで!)
(流石にノクトもこの状態じゃ襲わねーだろ)
(和解できた様で良かったな)





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