お手伝いの時間
『ノクトは、王家の人だったんだね』
「王子は今亡くなった事になっているからな、名乗る時は違う名前を名乗っているんだ」
「ノクティーガーって、ちょっと強そうだよね」
「胡散臭さがすげーけどな」
焚き火を囲みながらたわいもない話をする、ノクトが王子だと聞いたブルー時は正直驚いた。そう見えないとかではなくて、こんなに直ぐに魔法が使える人に出会えると思わなかったから
何が手掛かりが掴めるかも、と思ったが…今までで私のような存在は見た事も聞いた事もないらしい。
そっか、と返事をすると少し暗い表情をしてしまった私に気を遣ってか、プロンプトがあ!と声をあげポケットをゴソゴソと漁り出すとこれ、ブルーの?と何かを取り出す…それは何処かで無くしたと思っていた杖だった。
#名前#は無事に私の元まで戻ってきてくれて良かったと、プロンプト御礼を伝えた
他に何を持っていたのか確認すると着ていたローブの内ポケットに小さめの巾着が入っている、それは検知不可能拡大呪文の掛かっている巾着だった。あまり大した物は入っていないだろうが、後で中身を確認しようとまたポケットの中に戻す。
それから、彼らがなぜ旅をしているのかと言う話にもなった
ノクトはこの国の王子で、婚約者のルナフレーナと結婚式の為にオルティシエという所に行く予定だった事、途中…祖国が陥落してしまったと言う事。
奪われた国とクリスタルという物を取り戻す、その為にはまず王の墓所という所で力を身に付けねばならないと言う事も。
短い時間だったが沢山話をしてブルーは一気に頭の中がオーバーヒートしそうになる。
帰る事も大切だがまずは皆の助けになれればと、そう思う一心で自分に出来る事はやろうと心に決めたのだった
今日はもう休もうとイグニスの言葉で就寝につく準備をすると、そこでプロンプトが口を開いた
「そういえば、ブルーは誰の隣で寝る?」
『え?』
「確かに、決めていなかったな」
「俺の隣で寝るか?ブルー」
「グラディオの隣はやめた方がいいよ、危ないから」
「なァにが危ねーんだよ。至って健全じゃねーか」
「それに狭いだろ、グラディオの隣じゃ」
「プロンプトも寝相がな」
「ノクトの隣か、イグニスの隣か」
『あ、私までテントに入ったら狭くなっちゃうだろうし外で寝るよ』
「外って…?」
『…適当にこの辺りで?』
「「危ないに決まって(るわ)(んだろ)(る)(るよ)」」
『…は、はい』
ブルーは流石にそこまで迷惑は掛けられないと外で寝ようとするがあっさり却下されてしまう。結局は端っこでノクトの隣で寝る事になり、毛布を渡され横になると色々あり過ぎたせいか皆が話し込んでいる中すぐに眠ってしまった
ふっ、と意識が浮上すると目の前にノクトの顔がある事に驚いてしまう。そういえば自分は知らない世界に、と言うことを思い出すとキョロキョロと見渡す。まだ皆が眠っている為起こさないよう静かにテントを出た
ぐぐ、っと背伸びをするとまた欠伸が出る。もう少しで朝日が昇る、それをぼーっとしてずっと眺めていた
『…本当に、知らない世界なんだなぁ…』
実感がない訳ではない、飛ばされたからには何か理由があるのか…自分が最後、あちらの世界で最後自分に何があったのかがどうしても思い出せなかった。返してもらった杖を懐から取り出すと、じーっと見つめる
こっちの世界でも魔法が使えて良かった、と安心した時だった
「もう起きていたんだな」
いきなり話しかけられてブルーはうおお!と驚いて変な声が出てしまう。杖を落としそうになるが間一髪で拾い上げ振り向くとイグニスがテントから出て来た所だった
『い、イグニスさん…!おはようございます』
「おはよう、昨日は眠れたか?」
『おかげさまでぐっすりでした、ありがとうございます』
「なら良かった。朝食の準備をするから少し待っててくれるか?」
『あ、お手伝いしますよ!何をしたらいいですか?』
「ありがとう、そうだな…今から水を汲みに行ってくるから少し待っていてくれるか?」
『…水、ですか?』
「ああ、俺とした事が補給するのを忘れてしまってな。少し離れた場所に川があるから、そこで汲んで来ようと思ってるんだ」
『あの、お水入れようとしてる入れ物とかありますか?』
「あるにはあるが」
『ちょっと借りますね』
「?…ああ、」
すう、と息を吸い水を溜める入れ物に杖をかざす
アグアメンティ、と唱えると杖の先から透明な水が溢れ出てくる
入れ物が一杯になるまで注ぐと呪文を止めた
『このくらいで大丈夫ですか?』
「…凄いな、こんな事も出来てしまうのか…ありがとう、これで朝食の準備に取り掛かれる」
『いえいえ』
ありがとう、と言われるとなんだかむず痒く感じた。魔法を使ってお礼を言われると言うことはあまりなかったから。
ブルーは2人で朝食を作っている最中に色々な事を話した。
好きな食べ物や趣味の事、その最中に敬語では無く名前も呼び捨てでいいと言われた。
なんだかまだ出会って間もないけれど美味しいコーヒーの淹れ方や魔法を使わずに料理をする仕方を教わって、イグニスの温かさはあの赤毛の大家族…ウィーズリー家のお母さん、モリーさんに似てるなぁと思った
。
うまく言い表す事は出来ないけれど、性格とかではなく何かを教えてくれる時の優しさとか、褒めてくれる所とかがすごく似ている。
お母さんがいたら、こんな感じなのかな…なんて男の人にこんな事を思っていたなんて失礼なので内緒にしておいた
「おっ、もう起きてたのか」
『おはようグラディオ』
「ふぁぁ〜おはようみんな…」
『プロンプトもおはよう』
「もうすぐ朝食が出来る。ブルー、悪いがノクトを起こして来てくれないか」
『はーい』
「あの寝坊助は中々起きねェから覚悟しとけよ」
『えっ』
「そうそう、ブルーがどうやって起こすのか楽しみだな〜」
『…ええ?』
そんなに起きないのか、程度の考えだった。
起こしに行ったは良いが本当に起きない。揺すっても軽く叩いても大きい声を出しても本当に、起きない…。
どうしたものか、とぐっすりと眠っているノクトの寝顔を眺めると熟睡しすぎてなんだか可愛く思えてきて思わずふふっと笑ってしまった。
何笑ってんだよ、と声が聞こえると、彼はうっすらと瞼を開けている
『…起きてた』
「ジーッと見られたら気がつくだろ」
『どうだか…あ、もう朝ご飯出来てるよ』
「っくぁー…、起きるか…」
話を逸らすように朝食の話題を出す。
ノクトが起き上がると2人で一緒にテントから出て、出来立ての朝食を満喫した
レガリア、と呼ばれる車に乗り込む5人
ブルーは後方の真ん中の席…グラディオとノクトの間の席に乗る事になった。
「狭くねぇか?」
『大丈夫だよ』
「疲れたらいつでも言ってね、ブルー」
『ありがとうプロンプト』
イグニスが運転席に座り、エンジン音が鳴ると車が走り出す。
列車には沢山乗ったけれど車には乗った事が無かったのでなんだか不思議な感じだった
「そういえば、ブルーっていくつなんだ?」
『えーと、17かな』
「うっそ!17歳!?」
「全然そんな風には見えねぇなぁ」
「大人っぽいもんね、ブルー」
『そうかなぁ?』
「俺ァてっきり20歳くらいかと…」
暫く移動してからグラディオに問いかけられる。
私の周りにはもっと大人っぽい人が沢山いたから自分は幼く見える方なんだと思っていたのに、まさか20歳に見られるとは…子供っぽいよりかは良しとしよう
『皆はいくつなの?』
「イグニスが22で、俺は23だ」
「んで、俺とノクトが20歳だよ〜」
「20歳…!」
ブルーは驚いた、まさかプロンプトとノクトが20歳だとは…てっきり同じくらいだと思っていたからだ。先程から隣で寝ているノクトを見てまた自然と笑みが溢れる
『プロンプトとノクトが20歳かぁ…』
「えっ、意外って顔してるー!」
『…えへ、バレた?』
「オメーらはまだ子供っぽいからな」
「うるさいおっさん」
「だァれがおっさんだ!まだ23だろーが!」
「ブルー、疲れてないか」
『ありがとうイグニス、大丈夫だよ。』
ぎゃあぎゃあと騒ぐプロンプトとグラディオ、イグニスは騒がしいのもお構いなしに私に話しかけてくれる。とても賑やかで楽しい旅を、私は少し楽しみに進んでいた
(出発前)
(そういやノクト、)
(んぁ?なんだ?)
(今日はやけに起きるのが早かったじゃねーか)
(いつもと同じだろ)
(あの子のおかげか?)
(っ、うっせーなちげーよ)
(これから毎日起こして貰えよ)
(だァからちげーっつの!)
(ムキになるなって)
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