神様の使い












空飛ぶ戦艦の中、ブルーはノクト達とは離れ一人離れた場所に座り込んでいた。アーデンから離れたい気持ちもあるが今は一人で考える時間が欲しかったのだ








あの時頭の中で聞こえた声、それがブルーを分身だと言っていた。声の正体が誰なのかは分からなかったが凄く嫌な予感がする…こう言った予感はいつも当たってしまうのだ。




(…分身って…まさか、でも…)




以前プロンプトが言っていた事を思い出す。
グレイシャー洞窟を出て蛇に会った時の話だ、私が無意識に蛇を追い払ったと…聞いたことのない言葉を使って





(…もしも、本当にそうだったら?)








「随分難しい顔してるねぇ」


『…っ!』





いきなり正面から声が聞こえパッと顔を上げると、今1番関わりたくない相手が顔を覗き込んでいた。
帝国の宰相、それを思い出すと無愛想な表情で彼を見た




「そんな怖い顔しないでよ、取って食べたりしないからさぁ」


『…なにか御用ですか』


「面白い話、聞かせてあげるよ」




『…は?』



いきなり何を言い出すんだ、と言わんばかりに顔をしかめる
それでもアーデンは平然と話を続けていた




「十数年前、ルシス王国に双子の姉弟が生まれた…。その双子は王家の血を引いていないのにも関わらずクリスタルから認められ、特別な存在となり大切に育てられる…はずだった」



『…一体何の話を、』



「クリスタルに選ばれた赤子がいるとの情報を掴んだ帝国は双子の赤子を盗もうと計画し、それを知ったルシスは双子が誰の目にも触れない様…城から少し離れた場所で厳重に育てたんだ。双子も両親も小さな世界だが楽しく、幸せだったんだ…帝国が2人を奪いに来るまでは、ね」



『…』



「…続き、気になる?」



不敵な笑みを浮かべてこちらを見てくるアーデンから目を逸らせなかった。何故か他人事には聞こえない話…自分の事では無いはずなのに、凄く気になった




「ククッ、この話の続きはまた今度…ね」



頭を触られそうになり反射的に避けると空を切った手を見て笑みを浮かべている。いきなり勝手に話し出したのに一体何なんだ、と疑問に思うがまた今度、そう伝えられるとブルーの元から離れ戦艦の扉が開く




「さ、ここで降りて」




座っていたノクト達は腰を上げると大人しく外に向かって歩いていく。それにつられて外を出ようとアーデンの横を通り過ぎようとした





「大丈夫、もうすぐだよ」



『…っ、』




耳元で囁かれ逃げるように振り向く。ひらひらと手を振られると戦艦はブルー達を降ろしまた上空へと帰って行った




『…なんなの、一体』


「おいブルー、大丈夫か?あいつになんかされたんじゃ」


『…大丈夫、なんともない』


「ノクト、レガリアが心配だ…早く戻るぞ」


「ああ、分かってる」




腑に落ちない事ばかりだが今はレガリアの安否が大切だと思い急いで置いてきた場所へと向かう。

戻った場所には、レガリアはもういなくなっていた














数日後、





「まさかさ、見つからないとは思わなかったよ」


「シドニーが言うように周辺の工場に運ばれていればいいが」


「まあ持ってったのが帝国軍って可能性もあるな」


「またあのおじさんが助けてくれたりしないかな?」


『はは…冗談でももうやめて欲しい出来れば会いたくない』


「すげー嫌ってんな、あのアーデン宰相をよ」


「ブルーに同感だ。期待できるはずがない」


「だよねぇ、どうする?」





ノクト達は今、チョコボポスト・ウイズにいた
レガリアが行方不明のまま数日が経ち車の整備等に詳しいシドニーと言う人にレガリアの消息を辿って貰っている。
レガリアが無い、そうなると自然と徒歩での移動になっていた



「あれ、アンブラだ」



後ろを振り向くと黒い色の犬がいた…アンブラと言うらしい。
アンブラは着いてこいと言わんばかりにノクト達を茂みの中へと誘導すると現れたのは長い黒髪の美しい女性だった。
ゲンティアナ、とノクトが呟く



「聖石を背負いし王よ、雷神の啓示により力を宿しなさい。聖石を取り戻すために神凪はー」


「ルーナは、無事なのか」


「雷神のもとに… 」


「はぁ…良かった」


「ルナフレーナは誓約を終え光耀の指輪と共に水都にて待つ。早くお会いなさい。」





ゲンティアナは神様の使いだとイグニスが言っていた。大人しく2人の会話を聞き、ふとこちらに視線を感じるとゲンティアナがブルーの方をじっと見つめていた。





『あの…何か―』







「異界の子よ、恐れる事は弱いことではありません。」




ゲンティアナからの言葉にブルーは驚いた、まるで自身の事を知っているかのような口ぶりだったから。




『…貴方は、私のことを知っているんですね』



「真実は辛く重いものです…貴方自身が厄災にもなりえます…ですが絶望は時に希望の光に変わる時がある事を、忘れないで」



『厄災って…それっていったい…っ!』





真実とは一体なにか、それが知りたくて俯いていた顔を勢いよく上げるともうゲンティアナは既にいなくなっていた。








「ゲンティアナはブルーの事何か知ってるのかな」


「神の使いだ、もしかしたらブルーが俺達の世界に飛ばされた訳も知っているのかもしれない」


「ま、簡単には教えちゃくれねーのかもな」


『…そうだね』







ノクトはアンブラから赤い手帳を受け取ると焦りも混じりつつ大切そうに…悲しい顔をして見ていた。
手帳に何か書き込むとアンブラになにか伝え、その場を立ち上がる。




「指輪がルナフレーナ様のもとにあるならひとまずは安心だな」


「お会いできるのはオルティシエ?」


「ああ、船の手配が必要だ。カエムの港が今も使えるなら」


「昔の隠れ港か、イリスに連絡しとくぜ」


「俺たちは?」


「雷神にお参り」


「また神様…ブルー、行こ!…ブルー?」


『…あ、うん』


「どうせならチョコボで行こうよ!」




プロンプトに話しかけられ慌てて後をついていく、立て続けに起こる出来事に正直どうしたら良いのか困惑していた。真実とは何なのか、私自身が厄災だとも言っていた。
もしも自身が原因で皆に危険が迫っているならば、離れるなら…皆には告げられない きっと優しい彼らは引き止めるだろうから。
もしかしたら自信過剰かもしれないが…



そんなことをぐるぐると頭の中で考えるブルーは気が付かなかった…浮かない顔をして悩んでいるブルーの姿をノクトが横目で見つめていた事に





















(雷神はこの先か)
(天気悪すぎねーか)
(雷神の影響かもしれないな)
(こんな中キャンプだけはしたくないよ)
(用意してやろうか?)
(俺だけキャンプ!?)






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