「キミの瞳」
『あ、仁くん…』
「香織!」
私は今日も仁くんに会ってしまった
仁くんは最近散歩の途中に見かける少年
たぶん同じ歳
仁くんとは一回、二回しか話したことがないのであまり深くは知らないが仁くんはいい人だ
仁くんは私の事を気軽に名前で呼んでくれるし、何よりあの瞳の青が個人的に好き
髪の毛がハネてて、以外にしっかり者で
私はいつも仁くんの笑顔に救われている
でもそんなの自分の口からはいえない私だった
「今日も散歩?」
『う、うん…仁くんは…?』
「ああ、俺は……ちょっと買い物」
男の子なのにしっかり者でやっぱり偉いなぁ
そんな思っていることは唇から零せないわけで
私は仁くんの笑顔を見るだけでいいの……
「香織はいつも散歩してて退屈しないの?」
『しないよ?川とか、草とか、花とか…いろんな音が聞こえるし、趣味でもあるかも』
冗談のような顔で笑う私に仁くんも笑った
私はできるだけ仁くんと一緒にいたくて、買い物に付き合うことにした
最初は仁くんに激しく拒否されたが、荷物やらも少しでも私が持てるように、と思いながらついていくことにした
私は基本喋らないのでやはり会話は止まってしまう
それでもいい、それでも仁くんと一緒に歩いてることが嬉しい
私は無意識に仁くんの顔を見ていたらしくて、仁くんは「何?」といったので『なんでもない』と顔を逸らした
…あれ……なんで私今、体温が高いのかな…?
私は自身の額に手を当てて熱がないか確認すする
「どうした?」
仁くんが心配そうに覘いてくる
『(か、顔近い…)なんでもないよ…』
「…?……そうか、」
仁くんは心置きのない顔で前を向いた
でも、なんでかな?仁くんを見てると我が儘になっちゃいそうだよ……
もっと傍に行っても、怒られないかな…?
「!?」
私は仁くんの右手の袖を両手の指で掴んだ
『…!!ご、ごめん、なさい…』
仁くんの表情が変わったので私が何をしたのかが分かった
や、やっちゃった………
「べ、別にいいよ…」
『…怒んないの?』
てっきり仁くんが怒ると思ってびくびくしていたのだが意外な反応が返ってきてびっくりだ
「…いや…う、嬉しかったし……」
仁くんは顔を赤らめながらそう言う
『そ、そんな事言わないで……そしたら私――――……』
もっと我が儘になっちゃうじゃない……
キミの瞳
(じゃ、じゃあ…手!握っても、いい…かな?)
(仁くん…仁くん…これは恋、ってものですか??)
(私には分からないから、教えてね?)
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