「くるしいあつさ」

秋が近づき、ロンドンは赤やオレンジで染まっていた
風は冷たく、今日は天気もいい
散歩にでも行こうか、と誘おうとしたが、生憎彼はインドア派であった
夏では暑苦しく見えたフサフサの白い首元を見て言った

『デスコールには丁度いい季節なんじゃないの?』
「それは私の格好の事を言っているんだな?」

紅茶を啜りながらすました顔で私を見る
彼は私の持ってきたスコーンを口に含み、うまい、と言った

『だって貴方のマント、あったかそうだもの。夏は暑苦しく感じていたけど』
「君みたいにやんちゃじゃないんでね、すぐに暑くならないのさ」
『あっそ』

私は窓の外の楓を見ながら紅茶をすすり、彼は私を見ながらスコーンに手を伸ばした

「寒いのか?」
『寒いわね』
「では私のマントに御招待しよう」

え?と言いながら後ろを振り向くと、左の唇の端がつり上がっている彼が目に入った
その途端、黒い物に包まれた
私はソファの後ろから転げ落ち、床に衝突したが、デスコールのおかげで痛みが半減した。彼は痛くないのだろうか
残念ながら、私から彼の顔は見えず、彼がマントの下に着ているスーツのネクタイが見えた
これは言葉通り、マントに御招待されているみたいだ

『あったかいね』

顔の見えない彼の身体にぎゅっとしがみついた

「眠いのか?」
『眠いわね』
「ならば寝ていろ。お眠りなお姫様」

なによその言い方、と彼に聞こえたのかわからない台詞を吐いた
どうせ彼だから、きっと私の脈打つ胸の音はバレているんだろう
なぜだか自然と瞼を閉じれた私は、そのまま眠りについた





***
何か月か前にかいたもの
デスコールのマント暑そう
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