早期解決



「視線に気づき始めたのは………二週間前?ですかね」

「結構前だな」

「嫌がらせが始まったのもそのくらいなんで、"は!視線を…感じる…"とかはなかったの悔しくてしばらく誰にも言いませんでした」

「雪乃さんってやっぱり馬鹿ですよね?」

「嫌がらせされるってことはたぶん恋愛感情がこじれて〜とかじゃないと思うんですよ。腹立つことに。」

「お前に恋愛とか無理アル。親父の金玉からやり直せヨ」



うん。銀さんはいい。

なんだねメガネと美少女は!
失礼じゃないかね!!

一応年上だぞ!




「嫌がらせってのは具体的にどんなだ」

「えっ銀さんちゃんと解決しようとしてくれる……すき……」

「なら金追加しろ」

「それはちょっと……」

「ちっ」




ダメだコイツ金の下僕だ。

金欠のイケメンって絶対ダメ男に引っ掛かる女の人のストライクゾーンじゃない?知らんけど。

しかし私も金は好きだ。

これ以上万事屋に金をバキュームされてたまるか。



「最初は、朝起きたら枕元にこの手紙が…」



懐から折り畳まれた和紙を取り出して、テーブルに出す。

開くと、でかでかと荒ぶった筆遣いで"この泥棒猫"と書いてある。

私の知らぬところで男性をたぶらかし、その人を好きな人がこの手紙を送ってきたのかと思ったが、

部屋の中にある時点で怖すぎだし、この二週間私を意識してくれている男性は見た感じいなかった。非常に悔しい。



「内容的に女アル」

「"泥棒猫"って…心当たりはあるんですか?」

「無さすぎて泣いた」

「だろうな」




おいこらモジャモジャイケメン。

"だろうな"ってなんだコラ。刈り取るぞそのモジャモジャ。



「だからこの人の勘違いだと思うのですぐ誤解が解けるとも思って放っておいたんですけど……」

「勝手に部屋に入ってくるような奴に無用心アル。やっぱり馬鹿アルな!」

「えへへ神楽ちゃんが心配してくれるストーカー万歳。」

「馬鹿アルな。しね。」



ああん……神楽ちゃんがいつも以上に冷たい目を向けてくるぅ……




「あ、で。嫌がらせエスカレートしちゃって…
この前なんて布団の上が納豆まみれに…」

「あ?納豆?」

「はい。納豆。」



銀さんはなぜか納豆に過剰に反応を示した。

私は全く理解できないものの、神楽ちゃんと新八くんは見当がついたようで、お互いに顔を見合わせて、

三人とも天井を見た。




「おい。」

「はい?」

「お前じゃねぇ。……いるんだろ変態メガネ。さっさと出てこい。」




何やら銀さんは天井に話しかけている。

変態メガネ??
童貞メガネならいるが…


すると、話しかけていた天井の板が1枚ガタガタと音をたてた。




「えっえっポルターガイスト現象!?」

「……ったく」




銀さんは立ち上がって、腰に差してる木刀を、動く天井の板に突き刺した。




「きゃあああああっ!!」

「うわっ、え!?なに!?」





「いったたた…もう……本当に容赦ないんだから………そんな銀さんも…す、好きなんだけど…!やだっ!言っちゃった!」

「え、誰この美人さん。え、美人だヤバイメガネ美人だ神々しい…おっぱい揉んでいいですか」

「やめとけ変態が移る」

「銀さん、雪乃さんはもう手遅れです。」




ホコリ被ってるのに綺麗な薄紫の長い髪。

整った顔に色気のある涙ボクロ。

ドジっ子属性まであるのか……"メガネメガネ"と手元にあるメガネを手探りに探している。

なんだなんだ今この子銀さんのこと"好き"といったぞ。やはりイケメンはけしからん。
こんな美人に好意を寄せられるなんて………


はっ!まさか!



彼女!?!!!?!!??




「銀さん!こんな綺麗な彼女さんいるなら言ってよ!私てっきり独り身だと思って尻とか胸とか乳首とか揉みまくっちゃったよ!!」

「彼女じゃねぇわ!!!独り身とかいうな!!!」

「そうよ銀さん!銀さんがハッキリとこの女に私のこと言ってくれないから私がわざわざ牽制してたんじゃない!!」

「いつまでも付きまとって来ては変態行為におよぶド変態マゾ眼鏡をどう紹介しろと!?」



ダメだ…手に追えねぇ。

と、銀さんは疲れきってしまった。

この反応を見るに、この眼鏡美人様とは付き合ってないんだろう。
え、じゃあ銀さんこの眼鏡美人様フッてんの??
はーーーーーイケメン様のやることは違うねェ!!

ともかく、この美人様の"牽制"というのが気になった。




「あの、眼鏡美人様?」

「なによこの泥棒猫!銀さんはアンタなんかに渡さないわ!」




いや泥棒猫て……もう確定じゃないスか。

銀さんと会ったのは一ヶ月前。
初対面から銀さんをタラシ込むポッと出女に警戒心が生まれ、
眼鏡美人様は私をストーカーし始めた。

しかし視線に一向に気づかない私に業を煮やして一週間後に嫌がらせを始める。

といった具合だろう。



「あの、眼鏡美人様……私銀さんのこと恋愛感情で好きとかじゃないですよ?」

「え…」

「えっ」

「え」




勘違いしていた眼鏡美人様は分かる。何故に銀さんと新八くんも反応してんの?

そして神楽ちゃんはどこ行ったの。
あ、酢昆布台所から持ってきた。




「確かに銀さんカッコいいけど、私顔で惚れるような尻軽じゃないですし、金欠なのもいただけません。
それに私さらさらストレート派なので。」

「オイィィィィィ!!それはあれか!?"天パ以外イケメン"ってのマジだったってことかコラァァア!!」

「マジです。むしろ団子屋さんで銀さんとたまにいる栗色ヘアのベビーフェイス少年の方が好みです。ストーカーになりたい。」

「おっっま!!アイツはやめとくアル!サドが移るネ!変態でウザくてその上サドなんてお前ますますどうしようも無くなるアルよ!?」

「あれ、なんだろう目から汗が………」



神楽ちゃん私のことそんな風に思ってたのか……

泣きてぇ



「じゃ、じゃあ銀さんのこと好きじゃないのね!?」

「はい。アイドル的な好きなので……あ、ちなみに私推しの熱愛報道とかイケる口なので眼鏡美人様応援しますよ」

「お、お、お、応援!?!」

「やめろ馬鹿!!お前はコイツの気持ち悪さを知らない!!」



なんてこと言うんだ。こんなに美人なのに…

多少の欠点だって隠し味くらいのいい感じなアレになるレベルだぞこの美人。
顔で飯食えそう、やば。



「だから、お友達になりませんか?銀さんと貴女のこと近くで応援させてほしいですし……おっぱい揉みたい」

「お前それが目当てじゃねぇか!!女に手ェ出さねぇとか言ってたの誰だよ!!」

「純朴で一切の穢れを知らないまま成長してほしい神楽ちゃんと、世の中の穢れを知った上でなお美しくいる眼鏡美人様じゃ話が違います!!」




眼鏡美人様の方をふと見ると、彼女は震えながら泣いていた。

え、なんで?おっぱいダメだった?そんなに?




「………お、応援…されたの、はじ…めて」

「え!?そうなの!?泣き顔かわええ!!」

「銀さん、たぶんもう既にサド入ってます。」

「もうコイツ何でもアリだな。」







お母さん。今日はいい日です。

ストーカー事件が解決した上、

猿飛あやめちゃんという美人な友達ができました。








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