「ナマエ。」
「………はい。」
仕事から戻ってきた二人は、泣き晴らした私の顔を見て目を大きく見開いた後、リビングに来るように父が言った。
個性で治っている身体は全く支障なく歩くことができて、容易くリビングへと足を運んだ。
八木さんは、二人が帰ってきたので帰ると言ったが、せめて夕食ぐらいはご馳走させて欲しいと聞かない両親に折れ、私と一緒にリビングのソファに腰をかける。
テーブルを挟んで座る両親の表情は真剣そのもの。
ふざけた顔以外できたのか、なんて私のボケは瞬時に消えた。
「……父さん。エンデヴァーの事務所辞めてきたよ。」
「……」
「次の就職先は見つかってるから、安心しなさい。」
「…え」
てっきり、職を失ってこれから父は私の所為で求職をしなければならないのかと思った。
エンデヴァーが手配でもしたのだろうか。
「ナマエは、父さん達が手塩にかけて育てた立派な子だ。
何が悪かったかはわかってるはずだし、その顔から察するに、もう十分反省はしているんだろう?」
「………はい。」
「なら、これからはどうするべきか……わかるね?」
"私"の本当の両親、ではない。
だからいつも、心中では「パパ、ママ」や「お父さん、お母さん」と呼んだことがなかった。
本当に愛されるべき二人の子供の身体を乗っとるような形となった現状への罪悪感から、
彼らに私は一線を引いていたのだ。
それは焦凍くんや八木さんにも言える。
だけど、
「…………ちゃんと、ひーろーになる」
何よりも先にこの言葉を選んだ"私"に
安心したように笑う二人を、
「よし!それでこそ俺たちの子だ!」
"両親"と呼ばずしてどうする。
「おとうさん、おかあさん、」
涙ぐむ私に優しく頬笑むお母さん。
「…なぁに?」
うつむく私を大きな手で撫でるお父さん。
「どうしたぁ?」
「………だいすき」
私は、この家に生まれて良かった。
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