にねんかん | ナノ


▼ おもしれーだろ。

「それじゃあハンコック。いってきます!」

「気をつけるんじゃぞ」




あのマリンフォードの一戦からもうすぐ1年が経とうとしている。

来年には私はルフィと一緒にシャボンディ諸島へ向かって正式に仲間入りをし、新世界へ向かわなければならない。

だから、今年しかできないから、

私は今日、女ヶ島を出て親父さんとエースの墓参りに向かう。


きっとマルコ隊長が綺麗にしてると思うから、挨拶だけして、マルコ隊長に近況を報告して、
そしてすぐに帰ろうと思う。私はもう白ひげ海賊団ではないから。

近い未来の船長のもとへ早く帰らなきゃ。



「ルカ!もうすぐ凪の海域カームベルトを抜けるよ!」

「わ、早いね!」



ハンコックに船を借りたいと頼んだら、航海士などの必要な人員まで貸してくれた。

皆ここ1年近くで仲良くなった人たちだから、楽しい船旅になりそうだ。

何日ぐらいかかるんだろう?
ルスカイナ島に来たときは途中でシャボンディ諸島に寄ったから直線距離で行ったことがない。

すごい量の食糧をハンコックが乗せていたけど、そんなにかかるのかな……

余裕をもって出たけどもしかして命日当日までに着かなかったりして………



「どうしたんだ?ルカ」

「マーガレット、何日ぐらいで着くか分かる?」

「んー、私は分からないなぁ。操縦室の方に聞いてみるよ」

「ありがとう!」






***






「ん???レイリー、またルカいねーぞ!またケビョーか!?」

「君ね…一昨日ルカが会ったとき言っていただろう?墓参りだよ。」

「あーーーー、あれ今日か」




森から出てきての第一声に呆れてしまった…。

本当に、船員たちに同情するよ。

彼は本当に仲間以外の人の名前や顔はうろ覚えだし、まず覚えようという気を感じない。
彼のことだからそういう頓着しない性格に救われた人もいるだろうが、日常生活では非常に困ることが多いだろう。

ん?しかし確か……



「ルフィ、他人の名前や顔は覚えるのが苦手じゃなかったかい?」

「そんなことねぇ!ちゃーんとゾロもナミもウソップも…」

「仲間じゃなくて。例えば一回会っただけで特に会話をしていたわけでもない相手とか」

「そんなん覚えてるわけねぇだろ。」




しかし彼は、ルカがこのルスカイナ島に上陸した時に覚えていた。

あの状況でお互いに自己紹介をしたわけでもないだろう、一月以上前に一回会っただけの相手だというのに。


ルフィはもうだいぶ減ったがまだ擦り傷が残る手で薪を拾い始めた。

さっき朝食として食べていた魚はなんだったんだ…



「ルカのことはちゃんと覚えていたね。何か印象に残ることでもあったのか?」

「ルカ?…………んんんー」



頭を捻るルフィ。
顎も眉間もシワクチャでなんとも面白い顔をしている。
好きな肉を頬張りながら考えていると、ボソッと"なんかよ、"と話し始めた。

やはり何か印象に残ることがあったようだ。



「俺正直エースのことしか頭になかったんだよ。

エース見ながら走って、危ねぇときもあったけどなんとかなって、

エース、エースって思ってたんだ。」

「上を見ながら走ってたのか君は…」

「そしたらよ、ルカが急に見えたんだ。」






あの時、三大将が白ひげ海賊団達に気を取られてる間に、また一人敵が行く手を阻んで足を止めようとした。

そしてルカはそいつの攻撃を受け止め流したあと、振り向いた。


"止まるな。進め。"


そう叫んだルカの顔は、




「泣きそうだったんだよな」





ルフィは空を見上げながら話す。

およそ印象に残るとは言い難いシーン。

時々妙に勘の鋭い彼だからこそ引っ掛かったのだろうか。


しかし、戦場で泣きそうな顔を下げて参加するとは………あの甘ったれは……。




「あれ今なら何で泣きそうなのかわかったぞ。」

「そりゃ、エースのことを好きだったんだ。失うかもしれない恐怖で……」

「ちげぇよレイリー」

「?」




ちがう?

甘ったれで中途半端な泣き虫娘がその状況で他に何を思うと………

ルフィは顔を下げて、私をじっと見つめると、口を開いた。





「あいつ悔しかったんだ。

あいつより弱い俺が、エースを助けに行ってたことが。」




……………。

あのルカが?

驚く私を他所にルフィは肉を頬張りながら続ける。




「あいつ、ほんとはスッッッゲェ負けず嫌いなんだ!おもしれーだろ。」




そう笑うルフィに、かつての自分の船長の面影を感じたのは、

やはり"D"だからだろうか。

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