「おう。付き合えや」

「交際の申し込みとしては0点ね。」

「そういう意味じゃねぇ!!!」



既に筋トレで汗を流したゾロは、刀3本を持って優雅にサンジの用意した紅茶、ローズヒップを嗜んでいる最中に乱入してきた。

全く、無粋だ。

そう思った後に、手元のローズヒップを見て面白いことを考えてしまった。



「そんな汗だくな状態で私に勝てるとでも?ひとまず休憩を取りなさい。
水分を取ることも立派な鍛練よ。」

「あ?身体重くなる」

「汗で身体の水分出ていってるんだから当たり前でしょう。

そんなことも知らないで最強の剣豪になるなんて笑ってしまうわ。」

「ケンカ売ってんのかてめ!わーったよなんか飲めばいいんだろ!!くそ!!」

「ええ、そうよ。あ、なんならお茶でも飲む?紅茶だけど。」



手元のローズヒップをちらりと見せて、あらかじめ用意されたもうひとつのカップにポットから注ぐ。

テーブル越しにあるもうひとつのイスに腰を下ろすゾロを見て、本当に"何でも良い"んだなとほくそ笑む。



「紅茶って確か甘ぇやつだよな。」

「あら、苦手?」

「別に飲めりゃあいい。」

「そ。」



紅茶=甘いとゾロが考えていることが分かり、腹を抱えて笑ってやりたくなった。
しかし我慢。

すぐ近くにいたサンジがこちらの様子に気づき、自分と犬猿の仲であるゾロと私が一つの紅茶を嗜んでる光景に怪訝な表情を浮かべるけど、

そのすぐ後に自分が用意したのがローズヒップである事を思い出したのか笑いを堪えていた。



「はい。どうぞ」

「ん。」



素直にカップを受けとるゾロは口にそれを運ぶ。



「………」



一口、その紅茶を口に含んだ瞬間、

ゾロは大きく目を開き、口の中の物を全て吹き出した。

予想していたため少しイスを引いて座っていたので、見事にかかることは回避した。




「〜〜っだコレ!!!すっっっっっぱ!!!」


「ふふ、ふは、あははは!!」

「くっくっくは、ははははは!ばぁーか!!そりゃそうだ!!!」



そう。酸っぱいのは当たり前。

私が飲んでいたのは先程から言っていた通りローズヒップ。

酸味が強いことで有名な紅茶。

おそらく緑茶や麦茶ぐらいしか飲まないゾロにとっては未知の味。

ソレがわかっていてわざと飲ませた。



「てめぇ分かっててわざと…!」

「ふふ、ごめ、ごめんなさい…ほら、水よ」

「くく、おもしれぇもんが見れたぜ」



こういうときの価値観がバッチリ合う私とサンジ。
からかわれたゾロは怒り心頭と言った感じで水を一気飲み。



「…ダメねぇ。戦闘において騙し合いは大事よ?そのぐらいの頭が無くちゃ。」

「んなもん関係あるか。騙せねぇなら押し通す。」

「わぁ、筋肉バカ」




その押し通す力が私に劣ってるのにどうするって言うのよ。




「ゾロ、あなたより力が強い人なんていくらでもいるわ。私とかね。

だから"騙し"が必要なの」


「………」


「ふふ、納得行かなそうね?わかる日がくるわ。」









どうか、その分かる日は、

今日でありませんように。



「いたぞ!!アイだ!!捕らえろ!!」

「待って、待って!!アイちゃん!お願いよ、逃げて!!」

「邪魔だ、退け!」



島の男たちが武器を持って私に襲いかかる。

ゾロよりも早い剣の軌道。

私は抗う気もなく斬りつけられる。





ほらね。ゾロ、貴方より、私より強いやつなんて……いくらでもいるよ。


「アイちゃん…!!」



私は揺らぐ足取りで男たちに連行される。







どうか願わくば、彼が敵わない力に出会うのはこの島を出てからでありますように。

彼らは、この島を速やかに出ますように。

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