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相談してくれる一松



※「クリスマスおそ松さん」の後

一松と部屋でくつろいでいた。やることもなく、映画でも見ようかと提案したら、彼が部屋の隅の棚へ向かい、自分のDVDを並べているスペースから見つくろう。
「猫バスでいいよね」
彼はトトロをそう呼ぶ。いいよー、と返事をする前に、ぎゅうぎゅうに詰め込まれていたDVDを引っこ抜いたせいで、トトロの隣にあったパッケージが飛び出した。
畳に落ちた『お悩み相談室』の文字を見て、私は息を飲む。異様なまでの素早さでそれを蹴り、部屋の隅へ飛ばした一松を見て、予感は確信に変わる。彼には何か悩み事があるようだ。
「一松、何かあったの?」
「……見た?」
トトロのDVDを手に戻ってきた彼は、ちゃぶ台にそれを置きながらあぐらをかいた。
「う、うん。ごめん」
「……言っとくけど、こんなの捨てるつもりだったから」
「何言ってるの!捨てなくていいから!」
一松の手を握る。彼は怯んだように大きく仰け反った。
「その、言いにくいことってあるよね……?私じゃ解決できないこともあると思うから……それは、仕方ないよ」
「……あのさ、これはクソ松の――」
「でも、私にできることならなんでもするから、遠慮なく言ってほしい、かな……」
そこで何か言いかけた一松がぴたりと動きを止める。彼は先ほどまで引き気味だったのが嘘のように身を乗り出してきた。
「……。なんでもって……例えば?」
「え?そりゃ、一松が望むことなら、できる限り答えたいっていうか……。ため込んでしまうぐらいなら、吐き出してほしいっていうか……」
握った手を見つめながら、慎重に言葉を選ぶ。相談に乗ってあげたい気持ちは本当だけど、周りと距離を置いている彼は、押しつけがましいのは嫌だろうから。
「……どこでそういうの覚えてくるわけ……?」
「え?」
気だるげな一松の声を聞きながら、景色が傾くのを感じた。畳に押し倒されて始めて、彼の荒い呼吸に気づく。何故かいつもより興奮しているようで、すでに脚には熱いものが押し付けられている。
「一松?」
不穏な空気を感じて、先ほどのDVDが飛ばされた方を見た。そして『性なる夜のお悩み相談室』と書かれた背表紙を見て、すべてを理解した。
「い、一松……えっと、これは……」
「……今さら『やっぱムリ』はナシだからね」
ガチャガチャという音が聞こえ、彼がベルトを外す。
今まで壊れ物に触れるような慎重さで接してきてくれた彼が、数秒後、ひどい笑みを浮かべて、手首を縛り付けてくるなんて、私にはちっとも想像できなかったのだ。

151206